第244話 浮世音楽堂(8)
「師匠、じゃあ、オレも見に行ってきていいんですか?」
「あ!あ~……。イオが行くと私の生活のクオリティが落ちるが、いなくても大丈夫といえば大丈夫なんだけど…」
もしかしてこれ、少年であったイオくんに魔女さん相当に面倒を見られていたというか甘やかされていたというか、いないと不安になるレベルでよしよしされているのでは…?
「わかりました。その精霊の眷属を見たら速攻帰ってきますよ、何かに巻き込まれなければ。一応ここの畑と鶏のお世話はオート魔法は組んであるので1か月ぐらいなら大丈夫だとおもいますよ。そっちもトラブルさえなければ」
「そんなトラブルトラブル言うと、ほんとに起きるぞトラブル……」
魔女さんが心配そうな顔をしているところ、イオくんは「まあ、オレは兄と違って割と慎重なので、大丈夫だと思いますよ。兄に引きずられなければ」とか続ける。わかりやすくも仕掛けられた、横にいたアオくんは大きく笑顔をつくりながら「おーおーそうか!わかった!」と言いながらプロレスを仕掛けにいく。二人ともわりとでかいのでじゃれている大型犬のようだ。かわいいけど危ない。
「はいはい、ステイステイわかったわかった」
魔女さんが呆れた顔で自分より上背の高い二人の襟首をつかみとめる。しかし、まるで散歩中リードを引っ張られた犬のようにとめているのは一体どうなんだろうか。
「まあ、氷那が無事戻ったらお前たちが何をしてきたかをすべて報告してあげような。きっとお姉ちゃん、喜ぶとおもうな?突然火が付いたようにじゃれあってました、とか」
魔女さんがニヤニヤしながら発したその言葉に2人は見るまに真っ青になる。
「姉さんに…?」
「姉さん弟の恥は私の恥じ!とか言って大立ち回りしかねないから本当にやめてください」
「すみませんでした…」
「お姉さん、優しい人なの?怖い人なの?どっち?」
結局、気になりすぎたので問いかけてみた。
「姉は、優しくて怖い人です。早くチーズさんに会わせたいです」
「会って仲良くなれるかは別の話ですけどね」
「おいイオ」
「だってそういうもんだろ?!」
まあ、聞き及んだ話を含めると私にとってはこの双子の大事な人で、多分私の姉弟子で、凍結魔法以外に同時に仕掛けられた王の呪いを受けて自分の時を止めているひとで、凍結魔法の魔力コントロールに一役買っている。いや、属性多いな。
会ってみたくはある。
「で、今日やることはお前たちを例の拠点に送ることだが、久方ぶりにあの使い魔たちに連絡をとってみたのだが「全力で俺たちとあそんでくれよな!」とか不穏な返事が返って来て……まずあの拠点がどんなことになってるかわからない」
「師匠が40年も放置したからでは?」
「もう完全に自分の家ですよね。しかも精霊ということは、飲食はとりわけ不要だったり?」
「アイツらはお茶はなんかものすごく飲む。ついでに菓子も作る」
「食べた事あります?美味しいですか?」
「しいて言えば、独特な味」
「独特な味」
「食べてみればわかる。じゃあお前たちをおくってやるか~、あ。イオは見学したらもどっておいで」
「了解です」
「ねえ、おねえさん」
そこまでなぜか静かにしていた天くんが、魔女さんに突然話しかけた。
「閃閃と閃電、連れて行っちゃだめでしょうか?危ないところに行くなら、連れていきたいんだけど。お母さまにお願いできるかな……」
産まれてからまだ1年も経っていない、見た目少年にとっては多分さっきの精霊のありさまが脅しになっているようで、心配ではあるらしい。しかしなんか言語がどんどん流暢になってきてるんだけど、いまういもおなじぐらい育ってたりするんだろうか。
「お姉さんと呼んだな天!おまえ愛い奴だな!いいぞいいぞ、じゃあ………」
そこから魔女さんはどこかとというか多分ウララさんと通話、あっという間に承諾を得て、連れていけないまでも呼ぶことができるようになったようだ。その後魔女さんは赤い転移石を取り出し真っ二つに割る。その石を無言で渡されたアオくんイオくんは角とり作業を開始、終わったところで魔女さんに戻した。
「いいかい、この石があるだろう?これに願いを込めて魔力を流せばお前のお付きの虹竜は現れる。まだ調整中だから、1回10分、次に呼び出すまでは24時間。ということがお前の母の出した条件だ。ここぞというときに使うといい」
魔女さんに戻された石のうち1つを天くんに渡しながら、そう説明した。まるでゲーム時間を親が制限してるがごときシステムだ。
「わかりました。ありがとうございます!」
そう言うと天くんは大事そうに石を自分の収納に保管する。
「お前たちの指導がいいのか、良い子にそだってきてるなあ。引き続きよろしくな。いや、本来はチーズの兄が担当だったはずなんだが…。まあ、いいか。あまり向いてなさそうだし。では外に出て手を繋いでまるくなれ~」
そう号令がかかったので、家の庭先に出て、みんなで手を繋ぐ。ちょうど植えてある
「行ってらっしゃい。奴らによろしくな」
その声が聞こえるか否かぐらいで、転移魔法が発動、ぐんっという上昇を感じた。
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