第83話 ナット/鶏だ畑だカレーだ!

 冒険者ギルドCランクになり、レベルもそこそこあがったために、私の魔力リソースには多少の余裕ができたし、新たな魔法も開放された。

 

 それは、いったことがある場所への転移魔法だ。具体的にいうと、今ならば転写地ナット、ドラゴンの厄災で燃え盛るネルド、農業実習中ミアカ、絶賛ダンジョン攻略中のアトルだ。因みにネルドの移転先は一度も行っていないので転移は不可能。

 凍結魔法を維持している魔女さんに頼ることなく自分の力で移動できるというのは、本当によかったと思う。

 因みにアオくんは自分のスキルとしては保持していないため、魔女さんの力を借りて転移を行っていたらしい。

 

 転移スキルが使えるようになった実証実験で、家に帰還してみた。因みにナットでいうと、王城と自宅が転移先として登録されている。

 兄さんが隣国に向かったというので、私は一時的に家の様子を見に帰ってきた。牛ちゃんたちはミアカのみんなが頑張ってくれているので、畑と鶏と、庭と、草むしりを3日間ぐらいでこなし、また、ダンジョン攻略に向かう予定だ。

 

 今回一時的に戻るにあたって魔女さんとイオくんも私の家に来ている。魔法使いさんを連れて行ってくれた、兄に感謝だ。魔女さんからもこの世界に呼びつけておきながら、魔法使いさんが来てから距離をおいていたことについて謝られた。

 大丈夫、理解の範囲内っていうか仕方がないよね。

 アオくんとイオ君は殴り掛かるように近づいたかとおもうと強いハグをしている。

 

 そして振り返り、こう言い放つ。

「チーズさん!お兄さんから申し付かって畑の管理、しておきましたよ。マニュアルにあることは大体できているとおもいます。」

「ご苦労じゃったな!引き続きよろしく頼むぞ!」

ものすごく心強い。


 「兄のことを含めても本当にありがとう。早く外貨稼いで復興できるように頑張るから。まずは鶏小屋の掃除をしなきゃ!」

 今日は私はピンクのつなぎを装備する。そして、アオくんがみんなに紫外線防止魔法をかけてくれる。


 鶏小屋はまず中を掃きだして消毒、しっかり換気。実際うちの鶏は鶏卵農家を大きく営む程度ではなく、家庭で必要な程度の卵生産のためにいてくれている。ちなみに、出たごみはたい肥化。

 走らせるためにつくっているフィールドもきれいに掃除して、病気の防止に努める。この世界で何かがあったら、手の打ちようがなくなる可能性が高い。


 「鶏小屋も終わったし、よし、次いこう!畑!」

 そう言って意気揚々と足を運んだ家の裏の畑。

 雑草が全くない。イオ君を見やるとにやりとしつつ、こう言い放つ。

 「多分、何もしなくていいと思います」

 

 兄がしていたジャガイモ畑の拡張以降、ジャガイモ畑以外も含めて、イオくんものすごく画期的な方法で畑の草取りをしていてくれていた。

 というか、イオくんのオートメーション魔法がすごすぎて、文字通り、何もやることがなかった。

 

 イオくんが言うには、兄に雑草の種類のレクチャーを受け、そのパターンを引くものとしてを魔法に組み込み、魔法を畑全体に走らせ、引っかかったものをピックアップし、まとめ固めていく。まるでエクセルのマクロだ。パターンに有機物も登録可能なので、害虫もあわせて除去することができるという。

「何もすることないんだけど。すごすぎない?これ、庭にもできる?!」

「できますよ。効率化をして時間を作っただけです。チーズさんの元居た世界では魔法がないからこういう技はできないってことですよね。大変ですね…」

「うん、ほぼ手作業でほんと大変…大変だったよ…イオくんありがとう!!!お礼に今晩何食べたい?!リクエストして!」


「…やっぱり、カレーでしょうか…?本当にこればかりはアオがうらやましくて…僕が食べたいです!」

「わたしも!わたしも!」

 魔女さんまで。因みにアオくんはニコニコしながら、自分食べたことあるし~といった、余裕のほほえみである。

「カレーでも、最初にチーズさんがふるまっていたカレーが食べてみたいです」

 確かあのルー、あと何個かあったはず。


 その後家に帰り家の中を掃除、あらかた片付いたところで調理開始。

 王城で一人留守番をしているモヤ王のところに持ち込み、みんなでいただくことにした。

 晩御飯をいただくダイニングはまだまだ調度品が足りず、寂しい感じとなっている。そのうちできる限り取り戻せるといいんだけど。


 そして、ご飯を食べながら思い出す。

「そういえば先日アオくんとイオくん、同時に倒れたことあったじゃないですか。あれ、大きな原因ってあるんですよね?」

そう言うと魔女とモヤ王がありえないほどにせき込む。


「理由はあるんじゃが、もうちょっと復興がすすんだら、教えるよ」

「黙っててごめんね」

「僕たちは原因はわかってないんですけど、■■様はご存じなんですね」

「オレたちにも言えないこと?」

 と、いつもは積極的には聞いていない二人からも質問がはいるが、王も魔女も完全スルー。


 「時がきたら教えるよごめんね。」

 そういい、今はその時ではないと伝えた。まあ、そういうこともあるよね。


 そして、一日自分のベッドで寝たあと、魔女さんとイオくんに見送られ、次のダンジョンを攻略するべく、再び志摩と永長が待つアトルへ向かった。

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