第82話 シラタマ/刻の庭(6)
この待期期間の逗留地というなの温泉宿、貸切風呂まであった。
フロントで到着と同時にあまりにも日本の温泉地に近すぎるがために聞いてみたらあった上にすぐ予約可能というので、ご飯時を外した時間帯で予約をとる。
「ノリは温泉入ったことあるのか?」
「何回か」
「じゃあ大丈夫か。あとでいこーぜ」
大浴場もいいんだよな。やっぱり梯子するんだよ梯子。効能とかしらないけど。匂いがあまりないから硫黄泉ではなさそうな。
部屋を確認、暑いの服をTシャツとハーフパンツに着替え、ノリにも貸し与えた。
こう、この世界、防疫による逗留で発症した患者の入国は防止できても、収納や妹のフリースペースみたいな四次元持ち込みは防止できないようなきがするけれど、そこはどういう判断となっているのだろうか。
せっかくなので館内ツアーに行ってみると待機時間に10人ぐらいいて、この街のなりたち、調度品の寄贈元、宿の歴史等おそらくボランティアと思しきおじさんが案内してくれる。日本のどこの土地に近いか探ってみようかとおもったけれど、色々なものが混ざりすぎていて、地域が特定できない。
情報も戦力だと思ってこういう特殊なものは随時鑑定をしながら極力参加して成り立ち等を探る習慣があるのだけれど、神話時代から近代までが同時に進んでいるような感じなので、銅剣もあればナイフもあり、日本刀もある。すべて現役。一体どうなっているんだ。
「基本的にモンスターにあわせて武器を持ち替えて戦わないと弱点がつけなかったりするから、色々なものを持っているわけなんだよ。強い魔法や武器で崩す方法を使うひとと弱点をついて戦うスタイルの人がどっちもいて、どっちも尊重されてきた歴史があるってこと、って昔来た時に聞いたよ」
ノリの説明、割とわかりやすい。
ちょっと本気で戦うことがしばらくなかったために勘を取り戻すには少しかかりそう、というか本気を出すレベルの相手がいるかどうかはわからないけど、手数ね。新しいスタイルを使えるチャンスか、面白い。
そこまで考えて思い出す。そうだ、今回俺は料理人で身を立てよう、って思ったんだってことを。
◆
ここ「サンショウ」には、ギルド受付と、冒険者ギルド出張所がある。冒険者ギルド以外は本国にしかないようなのだけれど、あらかじめ持っていない人がこの隔離された土地から本国に入っていった場合、色々不便を被ることが考えられるため、出張所が設置された体だ。妹が言っていた「ギルドがあれば全部どり」となれば、料理人ギルドに加入するまえに、取っておいたほうが良いだろう。そもそもの話俺のステータスボードがバグって他人から認識されないというのはいい面もあるが悪い面も多分にある。
ちなみに以前にノリがきたときには入ってた方が良いといわれたがめんどくさくて放置。復興魔法を仕掛けて去ったと本人談。
「すみません、ギルド受付したいんですが」
「手続きの準備をしますので、少々おまちください」
ここで登録する人間が少ないらしく、マニュアルをとりに職員が奥の事務室へ向かう。ここは、冒険途中のギルドのランクアップに利用されるのが殆どで、新規はまずいないらしい。
「なあ、そういえばここで本名書くべきだとおもうか?」
「いえ、生体として認識されるので名前は自己申告でよかったはずですよ。じゃないと妹さん登録できていないでしょう」
「じゃあノリとユウでいっか~」
「貴方自分の名前、ナットから入ったのにわかるのですか?!」
「さあ、どうでしょう」
ノリの方を見て、にやっと破顔する。
「今医療ギルドの者が休憩中なので、20分ぐらい待っていてもらっていいですか。その他の手続は進めておきましたので。認証登録の担当が医療ギルドなもので…すみません」
「いえいえ、いいですよ~」
「そもそも登録しないでここに来る人なんてそんなにいないだろうし。どこの田舎者ってかんじ?」
ナットのギルド機能がいま失われてるため登録できなかっただけだけど。
ギルド案内所前の足湯処でゆっくり足湯をして時間をつぶす。一応の日よけはあるが、結構ギラギラしているがために、体があったまり、汗が出る。
鑑定してみたら
[塩化物温泉]
効能:神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、うちみ、くじき、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、きりきず、やけど
なるほど塩泉。他の泉質もあるんだろうか。
職員が戻ったということで呼び戻され、生体認証と血液登録を行い、初心者ガイドブックと魔石をもらう。
もうすぐ貸切風呂の予約時間となるため、冒険者ギルドは明日行くこととしよう。
◆
予約してあった貸切風呂は、露天風呂だった。
温泉ホテルの1階から外に出て向かう。洗い場も完備。なんというネオジャパン。
横に大浴場の露天風呂もあるため、貸切風呂の範囲にはいったところで防護壁と防音壁を展開。俺もどちらかというと得意な方ではあるけれど、ノリのほうがより精度が高くこの国にあった形で展開できるということで、相談のうえでお願いすることにした。
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