第13章 密室ノ会・祈

第208話 密室ノ会・祈(1)

 姿を姿としてとれなくなってから数か月。

 かなりよろしくないことに、自分の姿が思い出せなくなってきた。私の姿を映したものについては凍結魔法とともに、すべて姿をなくした。姿がないままでも復活してきてくれたシンは今までのように、付き合ってくれている。


「や!」

 そんなフランクな感じで突然魔女がやってきた。後ろに付き従うのは魔女の弟子のアオとイオ。アオが暫く異世界の君について歩いていたおかげで、このメンバーでの来訪は本当に久しぶりだった。

「温泉、弟子たちの発案だったが、結構良かったと思わないか?国が戻ったときにはなかなかよい温泉郷になるとおもうぞ。しいて言えば王城に近すぎるといえば近すぎるが、今この国で稼働しているのが王城とミアカ近辺だしな。今一番有用な立地ではあるよな」

 後ろで双子はにこにこしている。謁見の間であることと、シンがいることを考慮してか、口を開かない。

「で、今日は頼みがあってきた。」

『王よ、隠し部屋の事はシンは知っているのか?』

 魔女が突如、頭の中に直接話しかけてきた。これは、まれに魔女が使ってくるテレパシーみたいなものと理解している。そして、首を横に振る。

 

 そして一呼吸。

 シンはその場に崩れた。 


「王、言いたくなったら言うといい。その時まではわたしたちも頻繁に立ち入ろうとしないから」

「気遣い、ありがとう」


 そう言うと玉座から降り、魔女たちも促しながら、件の部屋の扉の前に立つ。多分この部屋は自分の遺伝子かなにかの認証じゃないと開かない部屋で、ここを造ったのはおそらく魔女なのだろう。

 

 そこは何の変哲もない壁。壁を扉と自分が認識することで、そこは扉の形とし自分だけが認知。その認知をもとに扉を開ける。記憶が戻っているせいかアオとイオはここ立ち入ったことがあることを思い出し、そしてここにいる者を理解していた。

 

 この部屋自体に防壁がはってあるせいか、この魔力濃度について外から認知されることはないように細工がされている。そして相変わらず、この部屋の中心にいる女性には近づけない。

「姉さん、相変わらずの魔力量だね」

「師匠の魔法の最大のサポーターだもんな。あの能力がこんなに役にたつなんてなー。しかも自ら立候補してこの責務負ってるし」

 そう言うと、魔女の弟子の双子がこちらをじっと見る。

「王様は、あそこにいる女性についてどのぐらい思い出していますか?」

 思い出していないことを言葉に出さないようにする。

「お前たちの姉だ、というところまで思い出したよ」

「え、なんだ!そこまでなんだ!」

「こらアオ!」

「あ、もしかして姉さんこの魔法発動と同時に明るい茶髪から黒髪に変化したから、別人と認知してる?いや、でも姉さんだってことはわかってるんだよね」

「あれ、なんだったんだろうな」


 そこまで言ったところで、双子は魔女の鉄槌を受けていた。

「まあ、ちょっと余裕が出てきたからな。あと街や市まるごと回復させても食料がないしな。王もその姿でいることにストレスを感じているだろう。少しぐらいのサービスをしても、いいとおもうけどどうだお前たち?」

「【神代】ダンジョンのリソースについては師匠の好きにして良いのでは」

「【自然発生】ダンジョンは僕も噛んでますし、使いすぎなきゃいいんじゃないですか」


「ん~じゃあ、まず、お主の姿をどうにかするか。このまま続けて記憶障害が大きくなっても困るしな」

「いや、私は最後でいい…」

 民の姿を奪っているのに私だけ先、というわけには。

「いや、とりあえずここにいるこいつらの姉の名前ぐらい思い出してもらわないと、色々支障がでるから、そこは甘んじて受けろ」


 そう言うと間髪入れずに魔女はどこからか杖を出し、部屋を解呪の霧で満たし始める。

 魔女の顔つきがかわる。

「……?何か様子がおかしい。アオ、ちょっとちゃんとお前たちの姉を見て見てくれるか」

「はい……あれ?妙じゃないですかこれ…あ!これって、イオ」


 なぜか双子は真っ青な顔をして、姉の方を見遣っている。

 

「王よ、すまない。この国の状況だが、凍結魔法だけでは防ぎきれなかったらしい。そのための大魔法だったというのに」


 魔女は言葉を選んで紡ぐ。

「魔法発動と同時、わたしの能力が落ちる隙を狙われたらしい。自分に力が戻って来て初めて気づくとかなんだこの巧妙な…。わたしを出し抜くとはいい度胸だな」

 真剣みがあってなにかトラブルが起こっていることが想像できた。


 そこで双子は頷きあい、兄の方が一歩前に出る。


「師匠、これ、呪いですよね。王に向けられた。その呪いを姉さんがギリギリ防いでる。王様の分は無理ですが、姉さんが肩代わりして受けている分を引っこ抜いて呪詛返しできるのは僕しかいないかもしれない。やってもいいですか?」


 みるみる魔女の顔が青くなる。

 

「今はやめろ。お前のその姉のために行う魔法、全て本人に戻す魔法だろう。私を出し抜いたぐらいだ、呪いに関してはかなりの力をもっているのだろう。こちらも万全の状態で行わないと、呪った相手に跳ね返したものが、お前に返ってくるぞ」

「でも…」

「でもじゃない!もう…ああもう!王、失礼する」


 そう魔女が言いつつ、私の手を形どらない手を掴む。

 

 魔女がつかんだ私の腕は、モヤが晴れ、その形を顕わにする。

 

 そこにあったのは、文字通り、骨だった。

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