第26話 ネルドへようこそ/城下町とギルド(5)

 ギルドは各国に設置されているが、その国に必要性が低いギルドは設置されない。

その代わり、設置されていないギルドのランクアップはギルド登録所が代わりに行うことができるようになっているシステムだ。

 要するに一度該当登録さえしてしまえばランクアップはできるが、レアギルドはそのギルドがある土地に出向かないと登録できないシステムでもある。


 ちなみに、「ギルド登録所」は「ギルド運営事務局ネットワーク」という国を超えた公的機関が主管しているものであり、各種ギルドの運営の補助、監査行う組織となっている。


 私は現状医療ギルドは回復魔法の適性はないので割愛。おそらくのほうが適正がありそう。商人ギルドもまだこの世界でまったく生産を行っていないため売りものがない、研究者ギルドはこの世界で一般的な研究方法の手順を学べばランクアップができそう。薬学は研究者ギルドの一環となるらしい。


 マンパワーには限界がある世界から、魔法やスキルによって出来ることがプロセスさえ理解すれば無限大な世界に転写された状況であり、元の世界では酪農家兼チーズ工房のあるじが限界かと思っていたところ、ヨーグルトやチーズ等の発酵食品の開発、クラフトジン・ウイスキー・ワイン等各種酒類の開発、牧場の拡大、野菜造り・営農指導、革新的な肥料づくり等、将来やりたいこと、やってみたかったことが行える可能性広がった。

 通常であれば一人では確実にこなせない仕事が、やり方によっては可能となるのだ。


 これから行う職業訓練方法によっては、ナット王国の人たちがメインで私の手が及ばない業務をそれぞれ分担して頑張ってくれるようになるだろうし、そうなればナット王国を農業大国として再興させ、モヤ王と魔女さんの復興悲願が達成される。


 どうも、そうなれるような力が私には与えられているらしいので、頑張っていくしかない。


 ◇


 拠点とするために到着したネルドでの宿で受けた説明によると、通常の宿と冒険者用の宿があり、今回は冒険者用の宿を選ぶと、シェアハウスのような一軒家を案内された。

 リビングとキッチンがあり、冒険者と随行者1名分はギルドカードがあれば、個人の居室が与えられる。滞在は最大1カ月で、長期滞在となる場合は別途事務局への申請が必要となる仕組みとなっている。


 その一軒家となっている宿の出入口で手の平をスキャンすると情報画面が立ち上がり、必要人数を入力すると、空きがあれば扉が開く。全体的に簡素なつくりとなっているが、冒険者が拠点として狩りをしていくことに限っては問題はないものとされている。


 ただ、高ランクとなっていくとこれまた別の拠点づくりの方法があるらしく、それはランクがあがって初めて認知が可能となるようになっているため、今の私には知るすべもない。魔女さんに聞けばわかるのだろうけれど。


「この宿だとさすがにういを走り回らせることはできないから、散歩にいかないと。あとクエストの素材集め」

「一緒に行きましょう。戻ってきたら■■様への定期報告をしましょう。」

 今この宿では、私たち以外に何人か冒険者が滞在しているらしいが、今は仕事に出ているのか誰もいないようだ。


 自分に割り当てられた部屋を確認。本当にベッドと小さなデスクしかない。部屋を確認後ロックをかけ、アオくんとリビングで集合し、一旦また、外に出ることに。

 

 時計は14時ごろを指している。

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