第85話 シラタマ/刻の庭(8)
首都「サクラ」は「
その「刻の庭」出身者が中心となり世界20か国で星読みにより、概ね天気予報、暦の作成を行っているという。吉凶については責任が大きくのしかかるため、基本シラタマ本国でしか行われず、他国からは要請があれば金銭を対価にして行うらしい。
どっかの映画でみた陰陽寮のような施設なのだろう。
そこから今回、俺たちが要請されたミッションに職員が一人ついてくる、らしい。まあ、多少の足手まといがいたところでまったく意にも介さないわけなのだけれど。
王に依頼されたのは、都の西方にある妖怪退治だった。
この国ではモンスターに類する怪異はすべて「妖怪」という呼称を使用しているとのこと。今回目的と定められたのは、1年前から西の山に巣食う何か。通常の狩りや食材収集に支障をきたしているが、如何せん妖怪の正体がわからないうえにレベルが高く、現状、
これ以上国内の勇士を失うわけにはいかなかったところに異国からのドラゴンを討伐できるレベルの人間が冒険者ギルドに加入しにきたとは飛んで火にいるなんとやら。
要請という名の強制、こうなった場合おそらくはノリは「いいですよ~」とかいって安請け合いしてさらっと解決するようなタイプだと思われる。
ただ、これはチャンスといえる。
討伐に向かう報酬として「シラタマ/サクラ」での土地と居ぬき店舗、営業許可を要求する。
とりあえず日々生産されていく生乳と脱脂粉乳、バターを使ってできるもの。牛乳屋かパン屋、またはそのハイブリッドでこの国に基盤をつくる。どうせ日本ぽい土地だ、小麦はなくても米はあるだろう。米粉パンでもいい。そしてマニュアル化し、現地雇用を創出する。
実際商売をはじめようにも、きっかけがなければ何もできない。利用できるものは、する。そこについて飲まなければそれまで、ということで。結果、本当に困っていたらしく、条件はのまれた。命の危機をはらむ(と思われている)がために、約束については契約としてのこすことになった。
ずいぶんしっかりしているもんだとおもったけれど、確かに明文化しておけば、あとからごちゃごちゃすることもない。
刻の庭の契約士が契約書を作成、サインの代わりにさっき登録したばかりのギルドの認証を使用する。
反故するつもりはないけど、反故したらどうなるか聞いたところ、ランダムで強烈な呪いが発動するらしく。今回契約の相手が王なので、これは、結構命がけのクエスト依頼、と考えるなど。俺もノリも呪無効スキルをもっていることは秘密だし相手にも見えてはいないのだろう。
「俺のスキルが見えないのはいいとして、なんでお前のスキルが他人から見えないんだ?」
「多分昔故郷で使われていた言葉に言語設定しているせいかな~。故郷がは外の世界から認知できないガードがかかってる上に人口も少なくて、今故郷からでて活動しているのはわたしと■■ぐらいなので、実際これ読めるの1人しかいないんじゃないかなあ。高ランク翻訳スキルでもない限り」
一般的なスキル構成だけはダミーで見れるようにしてあるんだけどね、だそうな。便利か。
「ダミースキルとか便利だな!俺もとれるかな。そんなの前の世界ではなかったよ」
「おそらくはユウはこちらの世界にきてからのレベルアップのスキルポイントだけが反映されて使用できるのではないですか。それをスキルボードに出たら使えば反映してその分だけこの世界の魔法が使えるようになるような。」
そういわれてみれば前の世界でとれたスキルボードは新規取得コマンドは閉鎖されていて、たくさん余っているスキルポイントはそのまま凍結されたのか。もったいない。
契約士を介した契約が終わった時点で今回の討伐旅行についていく若い女性が紹介される。最近天気予報チームに加入したばかりの身長150センチぐらいの女性だという。
「
ノリはまじまじと少女を見る。
「こんな女児、わたしたちの旅連れてって大丈夫?!ちっさいよ!」
確かに俺たちは比較的身長は高い。しかし、そんなこといわれたら気にするだろう!しかもコイツの愛しのの魔女様のほうがまだ小さい。
ため息交じりについ言ってしまった。
「お前、魔女さん以外の異性、なんとも思ってというか興味ないだろ」
「え、そんなことないけど」
しらばっくれても無駄だ。未明ちゃん困ってるだろう!
ちょっと面食らったようだがその後落ち着いて、言葉を発する。
「お気になさらず。お二人とても仲良しさんですね。私の得意分野は星読みですが、次に得意なのは風読みです。風読みとは今の天気、雲の大きさ、風の動きで天気を予測する、この国ではそれほどメジャーではない占い技術です」
いや、それ、占いか?
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