第8章 ナット/食糧難からの脱出
第105話 ナット/食糧難からの脱出(1)
西の離れでウララさんの世話係に任命されたのは8人。
凍結から解放された職員は残り12人いる。
「皆の者、この度は本当にご苦労。姿かたちを失ってまでナットに尽力いただいたことは誠に感謝。これからもどうぞよろしくたのむぞ」
と、魔女さん談。その後、今置かれた状況について、イオくんが説明をした。今いる12人の男女比は男性8、女性4。どちらかというとみんな、肉体労働よりはインテリに属する風貌。これからがっつり農作業となる予定なのだけど、大丈夫なのだろうか。
また、必要な種については王城の備蓄があったため、いかんせん古い種であり発芽するかどうかはわからないが、とりあえず一次栽培してみることとした。今までの家庭菜園をこえた、兄のつくりかけのジャガイモ畑もちがう、ちゃんとした畑を作ろう。苗づくりはまず、指導を行う前に私がこの世界のものを育てる実験をしなければならないのでとりあえず今は割愛。備蓄が尽きる前に、なんとか育てられる環境づくりをしなくては。
ちなみに、ビニルハウスもないわけではないが、うちにあるのは小規模のちょっと何か育ててみよう程度の大きさのものしかないので、大規模農業用の巨大なものは持ち合わせていない。
イオくんが自分が楽するためですよ、と言いつつなんだかいつの間にか農機やドローンに代わるようなを農作業魔法を開発をしまくっていたので、維持したり育成したりとなるまで至ると、割とどうにかなりそうなのと、その魔法をイオくんに近い魔法を使えるスタッフに教え育成することをしなければ。
アオくんとイオくんは実際は15歳の少年とはいえ、『凍結の魔女』の弟子であり、まず魔女さんが少女姿なだけあって、あわせて年齢不詳とみられているおかげでなめられることはほぼない。大人びてはいるけれど、本当にかわいい15歳だというのにね。
今回の育成対象は城の職員ということもあり、労働を放棄して国を食い潰してきた人たちとは意識が違うので、指導がしやすい。こう、労働適正のある人を先に凍結解除するのは良いかもしれないけれど、おそらく最後まで残る働いたことがない市井の人々をいかに労働に向かせるか、というのは大きな命題であることはわかっている。うっかり考えることは恐怖政治になってしまうので、なんとかうまくやる方法はないか、と思索はずっとしている。
なによりまず、畑の基礎を作らなければならない。区画を分けて、草を刈り、石をよけ、土をおこす。これまたイオ君開発魔法で農地候補地の草とりと石抜きはあっというまに完了した。
次は土おこしをしなくてはならないので、家から【無限フリースペース】経由で、ロータリーを持ってくる。こんな使い方していたら、気づいたときには家にあるものほぼすべてここに突っ込んでしまいそうな勢いがある。
加えて、とりあえず長靴と作業着を持ってきて、各自に配布する。これで大体在庫が尽きるので、あとはこの国で何とか作れる技術を手に入れるしかない。私は今日は緑色のつなぎを着て、しっかり帽子もかぶる。アオくんがそれとなく紫外線防止魔法を人間にかけてくれる。できた教官だ。
「まだチーズは他人のステータスを見ることができないじゃろ、わたしが確認してチーム分けをしてやろう。」
魔女さんはそう言い、12人中3人を「土いじりチーム」として私のところによこした来た。男性2人、女性1人のチームだ。魔法属性を聞いてみるとみんな【地】属性か、限定的な【土】属性の魔法が使える。
正直ここの痩せた土地を起こしたところでまともな土は作りづらい。そこでだ。一度機械で土を起こし、そこに私の魔法とこのメンバーの地または土属性魔とちとちゅう法により、畑予備地によさげな土を発生させる。そこにたい肥を混ぜ込み、ロータリーでしっかり起こせば、それなりに植物が育つ土壌が付け焼刃ながらにできるのではないか。と予想してやっていくしことしかできない。土壌の改良はなんだかんだ随時行っていけばいいだろう。
「よろしくお願いします。私はチーズといいます。」
唯一身長が大きくガタイのいい男性「ケイ」、逆にインテリの数値が上限突破してそうな男性「ソウ」、そして、強そうな女性「アヤ」の3人が私のところに来た。みんな、【地】属性または【土】属性魔法が使用できることでのチョイスらしい。しかもどうみても全員二十歳前後、肌年齢が若い。
「今日の作業工程は、畑の区画をきちんとわけて、ロータリーを使って土を耕すことにしましょう。」
結構広大な土地が分け与えられているわけであり、区画を6つにわけ、まずは、あとの私を含め3人はひたすらに耕した。農機も手動も総動員した。途中秘蔵の冷たい麦茶を【無限フリースペース】内の冷蔵庫から出してふるまったりする。ミネラルが足りなくなって熱中症をおこされても大変だし。
何だか知らないけれど、私のチームは肉体労働チームという位置づけなのだろうか。
そして午後17時ごろ、作業終了。そのままこのチームで夕飯準備を厨房で行う。
野外調理じゃないことが新鮮に感じるほど、最近は野外だった。
そして、今晩は肉じゃがと、鍋で炊いたご飯になった。大量調理人の面目躍如といこうじゃないか。
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