第104話 吉祥の白竜(11)
先ほどの交渉で西の離れの凍結解除が決まった。実際凍結解除は魔女さんに裁量があり、王は事後承諾のみ、といった感じだ。
ウララさんのから譲渡された宝飾品は高価なものばかり、ただ、まあまあ呪いのかかっているもの、位置情報を駄々洩れにする魔法がかけられているものと、大体ろくなものがなかったので、そういうのはまとめて私の【無限フリースペース】に格納し、宝飾品の解呪が得意分野の一つである救国の魔法使いさんにキレイさっぱり美しい状態にしてもらってから売却することとした。
国の運用に必要な資金調達も急務であり、今回の解呪のリソースとしてはおつりがくるくらいの価値がその宝飾品にはあった。
ちなみに解呪の報酬は、魔女さんから魔法使いさんへの「ありがとう」の一言のみだという状態だ。いいのかそれで。
王城から庭園を挟み、職員寮を兼ねた別棟にすすむ。そして区画を指定し、解呪の霧を発動。王城の職員には今回の凍結魔法について説明したうえで、魔法を実行しているために魔女さんは隠れる必要はない。西の離れは3階建ての中庭のある建物と別棟で構成され、この区画だけで完結する生活をしてきた者たちが、20人程度生活している。施設としては、厨房、食堂がある。
王様との相談の結果、職員寮の最上階には1フロアの半分を使った客間が2つあり、そこをウララさんの居住地にすることで話がついた。ちょうど護衛の部屋もあるため、そこはキイとノナが使用することとなった。過去一度攫われて分断されていることを考えると、いくら国全体が凍結魔法により姿を隠しているとはいえ、何かがおきないとも限らないため、魔法によるもう一段階上の防護を検討する。
そして、王様によりウララさんとそのお子さん5人のお世話係として、復活した職員のうち8名が任命され、志摩と永長がリーダーとなり、当面のあいだ取り仕切ることとなった。ちなみにトラブル防止のため、竜種の仔という認識は一般的に阻害され、人間の子と認識された状態でのお世話となる。
もうすっかりウララさんとレイさんは当たり前のように寄り添い、雛たちはもこもこのベッドのうえでゆっくり寝ている。キイとノナは日中はしっかり2人に控えている。
「私をさらい、レイを封印した輩や、さらわれた経緯についてある程度子どもが育ったらそちらに教えよう。いくら雛とはいえ、子どもの前で殺伐とした話は、避けたい。」
確かに子どもというものは、記憶にないと思われていた時期の記憶をもつことがある。幸いなことにここは一般的な人は立ち入れない。唯一立ち入ったのは『救国の魔法使い』ということから、賢明な判断かと思われた。
◇
ウララさんの部屋を後にしたあと衝撃的な魔女さんの発言をいただいた。
「時にチーズよ、ウララ殿のお世話係として、西の離れ復活させたのはいいものの、復活した職員の食料のこと考えておらんかったわ。どうしようか」
「マジですか」
「買い出し、アトルでいいじゃろうか。しかし20人分の食料って割と日がかさむと結構まずいよな。凍結した意味がなくなったら本当によろしくない。」
「後先考えずに凍結解除したんですか」
てへ、じゃない。
「■■様、そういうところ、ありますよね」
「いつもどおりすぎて安心するレベルだよ」
アオくん、イオくん、フォローになっていない。
産業で下支えをした状態でこの国を復興する、という目的自体が反故しかねない。20人の労働およびその対価、食料。ミアカへの給金もある。どう考えても今兄がやってる牛乳販売だけで賄えるきがしない。
「私の家にある備蓄食料でもそこまでの人数になると厳しいので、もういっそ、この離れの横に自給自足用の畑作ります?!それで軌道にのったら販売用まで手を伸ばせばいいだけですし。」
私の家は酪農家。野菜は自給自足程度のみ。ただ、畑作農家さんに農業実習は行っている。耕運機も、【地】属性魔法もある。ついでにまともに使えてはいないけど、時間干渉魔法もある。きっと、なんとかなる。
しかし、食糧難により冒険している場合じゃなくなるとか一体どういうことなんだ!!
「この西の離れから、さらに西のほうの空き地、全部畑にしちゃっていいですか。そしてウララさんの担当に割り当てられなかった人員は当面の間、畑作業の農業実習性になってもらいます。」
「いいぞ、何に使ってる土地でもないし。王には後で言っておく。」
他人の家に干渉するわけではないから、測量もなくざっくりで畑の区画を組む。
先日兄がつくったジャガイモ畑はまず種芋が足りていないと、現地品種じゃないものをいたずらに広げるのは外来種的にあまりよろしくないかもしれないので、西の離れの備蓄倉庫から、種になりそうな野菜を許可を得て探しに行く。本当は、コメとか麦とかがやりたいが、コメ作りはゲームでしかやったことがない。麦に至ってもノウハウはないので、家でしっかり本をひっくり返して調べてからじゃないと恐ろしくて手が出せない。
確認の結果、倉庫にあり種にできそうなものは「じゃがいも」「大豆」、種を買いに行った方がいいものは「人参」「たまねぎ」。そして絶対キノコはいるとおもうので「マッシュルーム」は育てたいがこれは培地を作るところから必要なのでもう少し後で行うこととしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます