第119話 ナット/食糧難からの脱出・継
野菜と肉については、当面の食材が確保できた。
ミアカにはお給料を出すことができた。
近隣の川魚はまさかの魚モンスターで駄目だったので別の方法を考えることにした。
ここで私たちは一度引き上げアトルに戻り、今後の基盤作成をしつつ、次のダンジョンの攻略に向かうことに。アトルの拠点はもともと志摩と永長がまわしていたものであり、ダンジョン攻略である程度留守にしていたことも常日頃からあったため、志摩に今回は私とアオくんが随行、魔女さんの計らいで、永長はウララさん付きとし、置いていくこととなった。
原因は完全に保守業務に影響がでるから、なのだが、本人はどこ吹く風で普通に喜んでいる。志摩が苦虫を嚙み潰したような顔をしているが、全く目に入っていないというこの強さ、見習えない。強すぎて怖い。
「ウララさん、ではちょっと1か月ぐらい他国へ出稼ぎに行ってきます。私たちへの連絡はイオくん経由で可能ですので、何かありましたら、なんなりとお申し付けください。」
「承知した。その時期にはおそらくそちの兄のところに大黒天を合流させることが叶うほど成長するだろう。なに、見た目は今とさほど変わりはしないが、中身が成長する。楽しみに待っておれ」
これは、私が兄のところに送り届けるという話か?別にいいけど。鳥竜種であるウララさんを私の【無限フリースペース】経由でナットに運び入れたことがある以上、兄に権限付与したルーム経由で送り届けることは容易に可能だ。唯一の弱点は私が中に入れないことだけ。
ウララさんと話したあと、王城へ向かい魔女さんとイオくん、そして王様に挨拶に出向く。今は気軽に挨拶に出向いてはいるけれど、普通だったら王様にこんなに気軽にご挨拶、とかもできないんだろうな。しかも、西の離れが復活しているためにおそらくは、仕事が増えている。
「こんにちは~挨拶にきました!ちょっとまた南にいってきます」
アオくんがイオくんの居場所のあたりをつけていてくれたがために、ピンポイントで狙いを定め魔女さんたちを発見、ビシっと敬礼をし、出立のあいさつをする。
「おお、行ってらっしゃい。きをつけての」
「チーズさんの畑の管理はオレに任せておいてください。あと何かあれば、アオに言ってくれれば伝わるんで」
「王にも一言挨拶にいってもいいですか?」
じゃあ私も同行するか、と魔女さんがついてきてくれる。今最近は執務室でできるような仕事が増えてきたがために、割と執務室に詰めているとのこと。いや、なんか会うの久しぶりだな。物語によくあるボンクラな側近にいいようにやられていたという話も最近聞いたし、このまま復興を続けていった場合、王の新たな信頼できる側近は立てた方がきっといいのだろうけど。上手く立ち回らないとまずい事がおこりそう。
まあ、そのあたりの人間の復活は最後の最後になりそうだから、今はしっかりモヤでいてもらわないと。
◆
「やあやあ、いつも美味しいごはんをありがとう。」
王は執務室でなんか器用に羽ペンを動かしながらなにかの書類を書いている。やっぱり、アナログなんだ。これ、やっぱり、帳簿がすべてアナログになってしまう…。
だからといってこの世界の文明、まず、コンピューターというものを見かけない。ネットワークが繋がってないから私のもっているパソコンの中のソフトも使えない。資源もほとんど魔力。多分、確定申告的なものが各国であるんだろうけど、全部手書きとかめまいがする。
いやいや、今はそんなことを考えている場合じゃない。
「リクエストとかあれば言ってくださいね。」
「まだまだ知らない食べ物がいろいろあるから、リクエストはまだ先にとっておくよ」
モヤ王、表情が見れたらいいのに。
「王、お願いがあるのですが」
「なんだい」
「これからこの国の産業として農作物が作れるようになった場合、輸出による収益を上げていかなきゃいけないとおもうですよ。あと、なにか、いい技術があればその技術を利用した技術提供でも収益を上げることが可能です。そして、私は貿易関係の知識、交渉経験は皆無です。何卒ご助力いただけないでしょうか。」
王が一時とまる。そして、何かを考える素振り。いや、モヤなのでそんな気がしているだけなんだけど。
「この国の貿易は残念なことにほぼ私が取り仕切り行ってきたのだが、私は今この姿なうえに、対外貿易交渉に立てるような状態ではない。だから、私について仕事を覚えてくれる人材が居るといいのだけど、そんな人材がまったく思いつかない!」
「対外交渉ができるぐらいの年齢、となると、ある程度の年齢は必要ですよね。」
「相手にされて、舐められない程度には」
「……魔女さん、思いつきます?」
「全く…」
想像したとおりの回答がきた。
「■■様、覚えてないんですか?勢力争いに負けて更迭された事務官。王に進言しようとして、側近に嫌がらせを受けて、国内のへき地送りにされたの、オレ達たまたま見かけたでしょ!」
「へ!あ!あ、いたかも。すまん!忘れてた」
モヤ王からのもっと早く言ってくれればオーラが漂うけど、きっとこれ、魔女さん見て見ぬふりしている。実際そういう状況になったら、どう動いたとしても、王の側近がいる以上、その事務官からの進言は握りつぶされ、重用しようとすると反発は免れないものだと思うから。政治とはなんとも難しい。
「ではその事務官、ナット国内のことじゃし、わたしとイオで担当しよう。確か私の隠れ家の近くに転居してきてびっくりしたんじゃよな~。安心してダンジョン攻略、行ってまいれ!」
その開き直った態度。いや、本当に、全く忘れてなかったでしょ、魔女さん。
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