第47話 ナット/凍結の魔女の憂鬱(2)
「続けるぞ。その魔法が結構面白くて私もあいつも日々魔法実験と実証実験に明け暮れて、教師に挑戦的なレポートばかり出していたら、最後には学校からは厄介払いのように学費さえ払えば卒業させてやるとまで言われる始末よ。当時まだ冒険者ギルドとかいうものもできていなかったけれどもその辺のやつらを狩って売ってしているだけで学費ぐらいは全く問題なかったしのう。そして、原因はわすれたけれど卒業式で大喧嘩よ。百年の恋も冷めるような事件だったような覚えがあるけれど、思い出したくなくて記憶を封じて捨てたというワケよ。」
「恋っていった」
「恋だったんだ」
「絶対魔女が悪かった気がする」
「うるさいわ」
魔女さんはふてくされた顔つきで、続ける。
「まあ、その後はあいつの顔も見たくなくなったのと卒業もしたので一人出奔したのだが、アイツは私の魔力の残滓をみつけては追っかけてくるから拠点がどんどん増えての、各地を転々としながら逃げまくってた結果20拠点を維持する始末よ。そのうえわたしは隠匿魔法にも強くなってしまったというわけだ。多分ナットに身を寄せてることは知ってたとは思うが、結構王たちが庇ってくれていたがために、ここ千年ぐらいは遭遇しないで済んでいる。」
「全力だ」
「相手もこっちも全力だ」
「■■様がどうみても原因っぽいのに」
「割とひどい」
「そんなに言うと説明やめるぞ!アオがドラゴンの厄災がおきてから使った魔法は『通信魔法』と『隠匿魔法』じゃろ?あいつ、絶対魔法の使い方のパターンとかを見て気づくかとおもうんだ。私の筋の者だって。だから、魔法を使わずに帰ってきて捲いてほしいというのが先ほどの通信の理由じゃ。」
「超私的な理由ですね。なにかがトラウマになってそうですが別に生理的に無理というわけでもなさそうな。」
「逃げずに一度は立ち向かえばいいのに。」
「喧嘩の理由を封じて捨てるとか絶対魔女が悪かったうえに引き下がれなくて捨てたんじゃないの」
「理由も忘れて逃げ回って長い間振り切り続けるとか人の心。」
「本当に封じた記憶はそれだけなのかい?それだけで逃げ回られていたならたまったもんじゃないね」
ついに私も突っ込まずにいられなかった。それよりもだ。
先ほどの突っ込みに聞き覚えのない声。隣には見覚えのない気配。振り向き見上げると美しい人影がうなづいている。
これ…魔女さん、アウトなんじゃ…!噂の人物これでしょこれ!
あの危機迫る指令と努力は無駄だったということだろうな。そもそもが魔女さんの説明からしても、魔女さんと双璧をなすような魔法使い。しかも世界のどこにいても厄災があればスキャンして登場するんでしょ?しかも今ナットは亡国状態なので魔女さんを政治力で護る人もいない。
詰んでるな。
「ア…あ…なんで……」
魔女さんはその声の主を目視するや否や、本当にあるんだっておもうような昏倒をしたが、倒れきる前に魔法の力だろうか、動きが止まって頭の床への直撃は避けることができた。
「あの程度で僕を捲けるとだなんておもってるの?ひどいなあ、記憶捨てて逃げ回るなんて。ちゃんとあの日のこと、しっかり思い出してもらわないと」
長く白いローブの衣擦れ音がする。
「そして、あらためて皆様初めまして。紹介にあずかってはいない、この魔女の幼馴染です」
180センチがあろうかという長身に長い金髪、耳先はとがり長い。整った面立ちに深いグリーンの眼をもつ美しきものが、この、ナット王国の王城にいとも簡単に潜入を果たしていたのであった。
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