第262話 浮世音楽堂(26)
真っ白な部屋に歩みを進める。
背後の出入り口についてはそのまま木の扉が見えているので、迷子になるとか行き過ぎて困るとかはなさそうではある。
「楽譜どこにあるんだろう」
「この場所に感覚を巡らせて。そうしたらどこにいったらいいかがわかるよ?」
その声の主、天くんはどんどん歩みを進めている。
「ぼくだとここだ」
天くんが光の柱にに包まれ、身体もなにか、透けたような感じになりこちらを見ている。まるでシャボン玉のような色彩になっている。そんなことを考えながら見ていたら、イオくんが同様のポジションを発見していた。
「多分これ、4人みんな見つけないと駄目な感じじゃないですか?チーズさんわかりそうですか?アオはとっとと見つけろ」
「様子見と言う名の見学してたのバレた?」
「バレバレだからとっとと探せ」
「はいはい。でも僕にはチーズさんの指導教官という役目もあるんだよねってことでチーズさん」
突然話の矛先が自分に向かってくることにびっくりしたけれど、
「、いいですか。前に師匠から魔法を教わったときに覚えた感覚、わかります?」
「あのぐわーってくる」
「それですそれ。その応用です。この部屋全体を体と魔力の流れで捉えてください。手とか広げてもいいですよ?」
「こ……こう?」
言われるがまま両手を大きく広げ、部屋の魔力の流れを捉える努力をする。肩甲骨のあたりが伸びるのを感じる。これはただのストレッチだなあ、などと考えながら言われたことを実践する。
「そうすると、どこか部屋の中にひっかかる場所が見えてくるはずです。それは光だったり、とげだったり、色が違ったり、人によって見え方は色々ありますがチーズさんの見え方を探してください」
横で指導にあたってくれているアオくんがいつになくやわらかい表情で、この部屋の明るさも相まってああ、キレイな顔してるよなこの子、などと明後日なことを考えた挙句、邪念邪念と思いちゃんと魔力の動きに集中する。
そうすると私の足先1メートルぐらいに、大きな光の柱が見える。人によって違う、とさっききいたけれど思いのほか大きい。さっきまでこんなものはどこにもなかった、と思う。
「見つけた」
「そうですか。ではそこに立ってくださいね。それを確認したら僕は僕の場所にいきますから」
「わかった」
ちょっと息をのむくらい大きな光の柱を確認し、その中に入る。
そうしたら、頭上からデータが降ってくるようにこれから演奏することが決められている楽曲が頭から体にもすべてインストールされるような感覚が襲ってきた。
知らない曲なのに知っている。
これはピアノ用の楽譜。
ある程度弾いてきた人ではなければ困難な難易度。今の私はスキルとして習得しているような状態だけれど、どのぐらいのレベルで弾くことができるのだろう。そもそもピアノは……うん、ここにある。今日の相棒が、感覚的に現れた。
「チーズさん、大丈夫ですね?」
「うん、思いのほか大丈夫。っていうかびっくりしてる最中」
「ではぼくも自分の持ち場に行きますね」
そう言うとアオくんもあらかじめわかっていたんだろう、自分のポジションに向かい、立つ。
「みんな持ち場に着いた、かな?」
「じゃあ僕は閃閃と閃電、呼ぶね。今がその時だって、思うんだ」
閃閃と閃電はウララさんとの制約により10分しか召還することが叶わない。しかも召喚後24時間は再召還ができない。ただ、この空間だとどうなんだろう、十分の一の時間の流れ、だとしたら100分の稼働時間があるのだろうか。
頭の奥では覚えろと言わんばかりに楽曲が鳴り響いている。
そんな中、天くんの手から光が溢れる。それと同時に現れる大きな影が二つ。
「よくきてくれたね。何をしたら良いかは……わかるよね?よろしくね」
大きな影は跪き、天命を受けているようだった。天くんのこれは、もはや成長というカテゴリで認知して良いものなんだろうか。ちょっと前まで幼い言動をしていたとおもったら、こう、王のオーラみたいなものをバシバシと出して言葉遣いも急に大人びる。
そしてちょっと経つとまた幼い言動を始める。
もしかすると一番この状態で違和感を感じているのは天くん自身かもしれない。兄と魔法使いさんの元にいたときにはここまでちぐはぐにはなっていなかったと思うので、これは正しい成長なのか、兄の庇護から遠ざかったことによるトラブルなのかは全くわからないけれど、一度兄またはウララさんに相談しておいたほうがよさそうに思える。
問題がないのであれば、それで良いのだけれど、如何せん仔竜の成長なんてものは皆目見当もつかないレベルでわからない。
「みんな、音楽も必要なものも掴んだよね?」
ぼやっと天くんについて考えていたところ、イオくんの発言で我に返る。皆それぞれに返答をし、顔をみあわせ頷く。みんなも私もシャボン玉みたいな色をしていることが面白い。
「じゃあ、ここ出るよ。このままここを出たら必要なものをすべて持った状態になっている、らしい」
「なるほど?」
私の
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