第107話 ナット/食糧難からの脱出(3)

 苗の発芽率は、大体3割だった。

 とりあえず、1回育ち切れば、種を増やすことができる。ということで、発芽した種を【時魔法】で成長させ、その後種をとるまで育成する。エラーを起こした種を取り除き、再度育成する、を繰り返す。人参は種を買ってくることはあっても、採取をしたことはなかったので本当に新鮮だ。種を買いにいかなければ、とはおもっていたものの、これでどうにかなりそうだ。

 

 ちなみに【時魔法】は今のレベルであげられるだけのレベルまであげたところ、5分で1日経過するクイック魔法を覚えたので、疑似太陽からの日照、肥料やりや水やりを超スピードでやればなんとか育苗が可能だった。


「結構手間がかかりますね~」

「そうだよ~手間暇かけてからこその、だよ~。ただ、本番1回目は時間魔法をつかって一気に育成して、その後はゆっくりいこうかな。とりあえず、食料いるからね」


 大体畑づくりにあと魔法の力をフル活用したうえで長く見積もって2日ぐらいかかる予定であり、その間に準備できるものを準備しなくては。大変ではあるけれど、産業として根付かせるためであり、家庭菜園でもないので、規模をできる限り最初からは絞りたくない。そのうち、米や麦も作りたいが、やっぱり育成難易度的にも、炭水化物的にも『芋』が最強だと思っているので、まずはそこからとりかかる。


「さて、そして、マッシュルームを作ろうとおもうんだよね」

 キノコから種菌を作る実験もする。これもまあ、【時魔法】が大活躍。室内で種づくり実験がひと段落着いた時点で、この控室を丸ごとキノコ部屋にしてやろうと思う。あとどっかにそのうちシイタケ部屋も作りたい。そのうちどうにか手立てを確立してから買って放置していたシイタケ育成キットから、めっちゃ増やしたい。外来種になるから、私の家のどこかに。


 そんな感じで、日中は畑づくり、帰宅後は育苗づくりに邁進。そんな中、兄からアオくんに通信が入る。

『ミアカに払える給料、ある程度まとまったんだけど、今ミアカの人たちって完全自給自足で金貰っても買い物いく場所もないんじゃないか?どうしたらいいと思う?』

 開口一番、それ。

 お金はお金としてプールしておく分は必要となるにしろ、それ以外の問題だ。


 「えーと、お金使えるようにほしいものの希望募って、移動マーケットつくるとか、村でマーケット開催するとか?」 

 最初は、店が私たちだけになる可能性があるが。

『まずそれ聞き取りから必要になるじゃないか。じゃあ、初回は給金だけ持って行って、来月何が欲しいか聞き取りが一番いいな。』

「わかった。じゃあ、種まきが終わったら、ミアカに私たち行ってくるよ」

『問題はおまえ、銀行口座持ってたか?』

「むしろ、銀行があるとか初耳」

 そしてあったとして、ミアカにあったかな。

 

『なんか、そんな気がしてた。まあでも、国外送金多すぎるとこっちも怪しまれるからなんか方法考えないとな…あ、アイテム収納袋に$マーク書いて、お前の【無限フリースペース】に入れるとかは?』

「私と兄さんしかアクセスできない場所を作れば可能といえば可能だけど、それってどうなんだろう」

 不用心すぎないか、手渡しと変わらないか?どうだろう。

『当面はその方法にしておいて、将来的にどうするかは後で考えるとして、とりあえず無償労働だけはまずいだろ』

 兄、ちゃんと考えてくれている。

 

 『俺たちの商売の大切な原材料だから、目に見えて稼いでることを自覚してもらってモチベーション上げて飽きずにやってもらわないと俺たちが詰む。死活問題』

「確かにそうだよね。ミルクスタンドホッカイドウだっけ?」

『いいだろ、北海道』

「まあ、悪くはないよ、悪くは」

『本当にミアカの人たち、しっかりいい仕事してくれているから今度何かでねぎらってあげないとな』

「次、兄さんがこっちに帰って来た時、行こう」

『そうだな、ありがとう。で、アオ、元気にやってる?』

「頑張ってます!楽しいです」

『妹の世話よろしく頼むよ』

「もちろんです!って世話ってなんですか!?」

『文字通り。じゃーな!送金準備できたらまた連絡する』


 嵐のような兄の通信がおわる。モニターによる中継を見る限り、兄、一方的に喋ってた。魔法使いさんうしろでニコニコしているだけだった。

「兄からみると、私って、アオくんにお世話されてるんだね。いや、されていますけど!鬼教官だし」

「そういうの、恥ずかしいからやめてください」

 なんか真っ赤になっててほんとかわいいな。

 

「ところでさっき話さなかったけど兄さん、あのウララさんとレイさんの兄さんのところに行く予定の子のこと忘れてない?」

「あのあにさんの隠し子みたいな仔竜ですよね」

「奇遇だね、私も本当にそう思う。」

 

「しっかしこの客間広いよね。私たち二人とういだともてあます。」

「明日もありますし、主寝室の大きなベッドでしっかり休んでくださいね。僕はセカンド部屋でのびのびと寝ますから」

「じゃあそろそろ育苗部屋閉じて、うい出して遊ぼう!」

 

 そういえば、兄の隠し子(仮)の仔竜で思い出したけど、ういも人型になる魔法を習得しているっていってたけど、いつ人型を披露してくれるんだろう。言語分野のスキル上昇待ちみたいになっているとはいっていたけれど。

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