第156話 ミソノ山/偵察隊・増(7)

 【飴魔のイヤーカフ】はあんなよくわからないモンスターから出たとは思えないぐらい繊細で美しく、金色の流体が常に流動している。こう見ると私の貰った紅魔のハンマーが一番、大雑把なつくりなきがする。これは初回討伐特典なのか、レアドロップなのかはわからないけど、次は青色のなにかが出るんだろう、と思う。


「次でラストじゃ!で、索敵は万全か?」

「今回はわかりやすかったです。ここから南に進んだところに動かずにいますね。おそらくこの反応はアンデッドですね」

「わかりやすくういの出番!」

 歩みは目的に向けて進んでいる。大体1キロぐらいだろうか。そもそもこのダンジョンはこのあと何層ぐらいまで続くんだろう。ダンジョンの中でキャンプとか、まあまあありそうだし、あと、通信環境は悪くないから兄たちに連絡はとりたくはあるけれど、その時は魔女さんには隠れ…いや、隠れたところであの救国の魔法使いだったら、隠れていることすら見抜くだろうから無意味か。

 

「このフロアも飽きてきましたし、さくっと終わらせて次いきましょう。」

「飽きれるってことは完全に過剰戦力ってことだよねー。適性なの私だけなんじゃないのこれ」

「いや、チーズさんは、支援魔法があっての適性なのでオレたちはいりますよ」

「…そんなすぐに否定しなくても。いや、わかってますけど!」

 

 だらだら喋りながら目的のモンスターの出現地点に向かうと、やはり青色魔物なのだろう。今までにはない、池があった。


「アンデッドで池…水場…」

 これってどう考えても這い出てくるやつ。ただ、私には大きな安心を担保するおまもりを抱っこしている。

 大体池まで10メートルぐらい近づいた時点で突然ダンジョン内だというのに天気が悪くなる。叩きつけるゲリラ豪雨は、師匠筋たちの強大な魔法によるドーム状の防護壁により、全て当たることなく流れ落ちていく。その水はすべて池に向かって濁流を形成しつつ流れていき、池の水はみるみる濁る。

 その濁った水場が泡立ち、5本の水柱が上がる。

「なんだろう、噴水かな?」

「確かにそれっぽいですけど、濁ってるからキレイじゃないですね」


 水柱が立っている下、池のほとりから案の定というか、青いスケルトンが這い出てきた。が、想像以上にデカい。餓者髑髏なんだろうか。手の平だけでも私の身長をこえる大きさで、頭蓋骨はゆうに5メートルはありそう。

 青い頭蓋骨がすべて露わになった時点で、ゲリラ豪雨の中に滝が現れたかのような状態になり、こちらにも大量の水が流れ込んでくるために、防御壁の周りを削りながら広報に水が流れていく。

 私たちの足場は確保され、地盤がそれほど弱くないのか、足元から掬われて崩れるということはなくてよかった。


「うい、やっちゃう?」

 そう聞くと、腕からぽんと飛び降りつつ巨大化。なんでいちいち巨大化しているかアオくんに聞いて見たところ「気分だっていってます。」だそうで、気分で大きくなっているうちの犬かわいい。

 後ろ足で地面を蹴り、空中に躍り出て滝のような雨にあたる。びしゃびしゃになっているういをみて、私が焦る。きれいな毛並みが泥の混ざった水を浴びるなんて!!危機感のかけらもなく真っ青になる。


 ういはそんな飼い主の気持ちなんて気にすることもなく、大きく3回吠え、餓者髑髏をあっという間に消滅させた。そして消滅と同時に天には晴れ間、池は青い魔石を残し消滅し、案の定というか、ドロップアイテムも一緒にそこにあった。

 そして仕事が終わったと言わんばかりのういは速攻小さくなり、私に飛びついてきたので抱っこした。お利巧すぎる。


「ドロップ、やっぱり青いアイテムですね」

「順番からいってアオ用ってことじゃな!」


 そこに落ちていたのは、【蒼魔のリング(レア度:★★★★★)】


 蒼いメタリックな素材でできた指輪、しかもダブルフィンガーリング。モチーフは、髑髏。

 あまりにも独特なフォルムのアイテムであるがために、魔女さんとイオくんが噴き出す。確かにいままで出てきたアイテムの中ではかなり見た目微妙感が溢れる。人差し指と中指にあわせたリングっぽいが、中指部分に完全に髑髏、人差し指部分には骨モチーフ、かつ、鎖までじゃらじゃらついている。

「これ、呪われてないですよね…?」

 実際呪われていないのは鑑定で分かっていると思うのに、アオくんがそう思ってしまうのもわからなくもない絶妙なデザイン。こんなんで、装備してあがるステータスが【力:+100】【命中:+100】【防護貫通】、きっとこれも裏ステータス補正ありそうなので、かなり強めのアクセサリに該当するんだろう。


「装備してみないの?」

 ちょっと促したくなったので促してみる。

「こんな勇気のいる見た目のリングはちょっと!心の準備が!」

「お兄ちゃんに似合うと思うな~」

 人の事いえないが、イオくんそれ煽ってる。

「変に使えるアイテムなことが何とも言えない…」

 

 アオくんはさんざん悩んだうえで、ひとまず収納に仕舞った。


「意気地なし~」

「だって付けたら完全に煽るだろお前!」

「もちろんだよ」


 兄弟仲良くてよろしい。そして、問題の転送魔方陣なのだが、アイテム回収と同時に池のあった場所に、発生していた。

「次のフロアに行けますね」

「ここは敵も弱くはないないのに出口戻りの石が一向にでない…」

 そうぼやいていると、

「初回踏破まで出ないパターンのダンジョンもあるようじゃぞ。もう初回踏破されていないダンジョン自体がないから、わたしですら初めてだが」

「ここは【自然発生】ダンジョンだっていってましたよね」

「何かの意志によって出来たのか、たまたまなのかはわからないが、他のダンジョンでは見かけることがないモンスターが居がちではあるんだよな。今回見てきても特殊な相手しかおらんしな。さあ、次に行こう」


 そう言うと、また4人でを繋ぎ、【転送魔方陣】に足を踏み込んだ。

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