前のエピソード――第20話　王城の近況報告／王と魔女（２）

　ういのあさんぽを宿屋のまわりですませ、その後チェックアウトをし、ドニさん一家に手を振られながら、アオくんとあと半分の旅程を出発する。

　ある程度宿から離れたところで後方を確認。そっとスケートボードを取り出し、顔をあわせ示し合わせ、走りだす。別に隣国までの道程は山坂があるわけでもなく、たまにモンスターが出るだけのほぼ平地なわけで、別に危険もそんなになかった。

「チーズさんおいてきますよ～」

　数キロ走ったころ、魔法少年アオくんが魔力のコントロールの調整が魔法で推進力をボードに加え、疾走しだす。うそやろ。

　電動キックボードを断たれた私には学びたてのうっかりすると土を放出する土魔法と、事故ったら怖いので微弱電力しか使いようがない雷魔法しかない。しかも鉄砲撃っても尚更なことないので歯噛みする。

　そうすると、その時、ふと世界が暗くなる。

　上空を見上げると、大きなドラゴンが悠々と上空を飛び去っていった。

「アオくん！あれ！ドラゴン！！！！」

「チーズさん初めてでした？ドラゴン。まあまあ空飛んでますよ」

　やっぱりこの世界、ドラゴンがいるんだ。強くなったら狩りたい。

「ドラゴン狩るにはどのぐらい強くなればいいのかな～罠とかつかえるのかな」

「狩りたいんですか？！過去数例ぐらいしか報告たしかあがってないですよ。しかも、基本触らなければ大人しくしてるうえに殺傷能力も高いので触らないほうがいいですよ」

　まあ、普通の考えではそうですよね～

　でもドラゴンハンターってロマンじゃないですか。

　遠い将来でもいいから、絶対やってやろう。基本外の竜がいたら。

　そんなこんなで道中意外とモンスターや狩りをする動物がいなかったがために、レベルは２しかあがっていない。

　スキルポイントが増えたぐらいで新しいスキルとかはまったくない。

　次は、次こそは。　とか言いながら走っていたら、隣国の砦が見えてきた。いよいよだ。さすがにボードで際までいくと目立つので、徒歩に切り替える。

「アオくんは隣国いったことあるの？」

「1度だけです」

　今回は国境をこえたところからスタートしているので入国審査というものはパスしている。目指す隣国の王都、どんな文明のどんな土地なんだろう。ナット王国は文化というものを知るには情報が足りなさ過ぎてわからなかったのだけれども、近づくにつれて、期待が膨らんでいく。

　大学のときは少し離れていたものの、牧場生まれの牧場育ちで、常に動物たちを気にかけ、世話をする生活をしていたために、こう、謎の転写に巻き込まれたうえで自由に旅をしているうえに自分がやりたいと思っていたことも割としっかりできそうな今、転写元の自分はそのままだろうけど、転写先の自分は空想の域みたいなこの環境をめいいっぱい楽しんでみよう。