第121話 アトル/星の窟(2)

 手芸用品屋さんであったらいいな思っていたものを購入。アオくんも何か買っていたみたい。


 店を出ると、日差しがやっぱり突き刺さる。誰も日傘をさしていないし、魔法でガードはしているが、本当にサングラスをしていても日差しがまぶしい。

「次どこいきましょうね。」

「そういえばまだ行ってないギルドってあるよね」

 確か、あと2つぐらい。

「そうですね。ギルドは全部どりが基本っていってたもんね。ただ、これから行くには時間が足りないし、散策じゃなくなるので明日以降にしましょうか」

「そうしよっか~」


 大体あと1時間程度で帰宅しなくてはならないので、次にどこに行くかステータスボードにインストールしたマップで確認する。フォローパーティーを組んでいるので、アオくんとマップも共有しているので、人からみたら虚空を指さしているみたいになっているんだろう。今の位置、家の位置のほか、例えばギルド施設等行ったことがある主な場所には目印が立っている。

 スマホもインターネットもない世界だけど、このステータスボードはなんというか、結構両方の機能を兼ねそろえたものに思える。それならいっそこれ、表計算ソフトとアウトプット機能もだれかつくってくれないんだろうか。


 結論、時間があまりないということになり、危険のないと思われる道を大回りして家と逆側の市場に出て、そこから市場の中をゆっくり見ながら帰ろうということに。なんとなく忙しかったため、ちゃんとみたことがなかったな、と。

 

 アトルの中心マーケットはかなり賑わっている。

 雑貨、野菜、フルーツ、ケータリング。本当にいろいろあって、目移りする。

「アオくん、欲しいものある?」

「え、僕ですか。特に…」

「少年、もうちょっと貪欲に生きようよ」

 じゃあね~といい、雑貨屋さんで、良いものを見つける。

「このアトルの拠点で使うように、このグラデーションのキレイなグラスを買おう。アオくん、瞳がちょっとブルー入ってるから、青にするね~。私は赤いのにしよ~。おじさん!これください!」

 

 通貨は世界共通なので、ギルド報酬でもらった金額を使う。

「お、姉弟お揃いで使うのかい。いいね!じゃあオマケでこの小さな袋をあげるよ。アクセサリーとか大事なものを入れるのつかってくれ」

 そういうと、綿でできた巾着を二つくれた。かわいい。


「私アオくんのお姉ちゃんに見えるのかな。姉弟だって。うまれてこのかた妹だったことしかないから。」

「イオは弟ですが、上に姉がいたので、お兄ちゃんであり弟ですよ僕は。」

「え、お姉ちゃんいるの?」

 

 アオくんは口を伝って出た言葉にびっくりしたようだ。


「姉、そうだ。姉、いました。しかも先日僕が倒れたことありましたよね。あの時、姉がいたことを思い出しかけたのがトリガーだった気がします。」


 ちょっとイオにも聞いてみます、といい、立ち止まってもいいように道路の端により、少し時間を置く。


「あ、やっぱりイオも思い出しています。」

「もしかして、西の離れの再生と、名前を取り戻したことで■■様の魔法の制限要件が緩和された…?」

 いつのまにか、思い出してはいけないという制限による失神のフラグが消失していた。

 

 魔女さんの魔法そんなややこしくフラグ設定されてるの?すごすぎないですか凍結の魔女。あんな、面白ご長寿少女だというのに。あ、でもアオくんとイオくんの師匠だし、世界2大魔法使いの片割れだった。


「姉がいた、ということは思い出したのですがそこまでです。名前も姿も思い出せません。でも今回は倒れずにすみました。」

「ちょっと進歩、かな。前みたいに倒れちゃったらホントびっくりするし、それでなにか脳に圧がかかったりしてても大変だし」

「西の離れだけでやっぱりこんなに緩和されるとは思えないのでやっぱり名前でしょうね」

「本当によかったね、碧生あおいくん」

 

 アオくんはなんか照れたような恥ずかしがるような表情をみせ、はにかんだ。なんというかほんとうに、いい顔だ。

 

 ◇

 

「ただいま~」

 家に帰ると、先に帰って、マンゴでカービングをしてみんなで食べるであろう準備をしていた志摩の顔が真っ青になった。

 

「お二人とも!なんでその形の帽子かぶってるんですか!ダメって言ったじゃないですか!」

 

 あ、キャップダメって言われていたの忘れてた。命にかかわるミスじゃなくてよかった。

 と思ったとたん、志摩に没収された。


 「謎の目立ち方するのやめてください!これ、どこに売ってるんですか?!とか聞かれたらどうするんですか。アピールするなら売ってる場所を教えられるか、自分が販売経路を持ったときです。特にこのアトルの国の人たちは好奇心が高いんです。もういっそこの形の帽子屋さんでもやります?」

 

 ものすごく呆れた顔に変わった。

 いや、私、キャップの作り方、知らないし。


「ごめんなさい…でもなんかそうやって商売デキタライイヨネ!」

「ですよね!外貨獲得ですよ!」

「では聞きますが、アパレル関係の知識は?」

「ない」

「ありません」


 結果、志摩によりこっぴどく叱られたうえに、翌日からあの帽子どこで買ったのと声をかけてくる人がまあまあ、いや、結構な数がいて、手芸以上の能力が必要とされている気がした。

 そしてカービングできれいに飾り付けられたマンゴは、食する権利が与えられず、志摩がすべて美味しくいただいた。

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