第122話 アトル/星の窟(3)

 アトル第2ダンジョン『星の窟』

 難易度的にはアトル第1ダンジョン『道化の窟』の次に位置する、適性レベルは120、階層は10階層あり5階層に中ボス、10階層にボスがいる。

 出現モンスターはゴースト・死霊系が多く、ドロップは『黄の魔石』が一番多い。

 

 ダンジョンの説明にはそう書いてある。

 アトルに帰ってきて2日目、『星の窟』にとりあえず挑んでみることになったので、早速ダンジョンゲート前にやってきた。

 

 狙うはBランク実績解除モンスター。実際【実績解除】モンスターは多数いて、どれを引くかはわからないが、その戦績が重要視されるということなので、なぜかレアモンスターを引いてしまった前回に引き続き、私が『異世界の君』であることを考えると、おそらくは今回もレアが引けるような、気がする。


『運というのは信じる者にくるものだ。自分の運を疑わない』が私の信条なので、それに従い、絶対に私には悪運と言えるかもしれないが、必ず運はやってくると信じてダンジョンに潜ってみよう。


「志摩、今回もよろしくね」

「こちらこそ、目指せランクアップですよね」

 志摩は、今回は少しレベル高いダンジョンであること、永長がナット国に離脱してしまっていることからも、万が一を考えてちゃんとダンジョン仕様の戦闘服を着用している。

「僕も準備万端ですよ~」

 

 アオくんも今回は動きやすそうな服装をしている。ってあれ、Tシャツにランニングバッグ、ジャージのハーフパンツ、靴はさすがにショートブーツ。その服、とっても見覚えがある。実家にあった兄の昔の服じゃないか。まったく、戦闘服じゃない。

「前に『やるよ』ってあにさんがくれたんですよね。似合ってます?」

 まさに、中学生が部活に行きそうな格好をしている。似合っている。似合っていますとも。

「似合ってるよ」

「ありがとうございます!」


 どう考えても、軽装すぎる格好なのだけれど、結局私がほぼ一人で戦っているをバフかけてくれながら見てるだけだろうし、今回は新たに買った分を含め短刀を数本、短銃を2挺、長銃を3挺持ってきている。

 私が強くなってきている、ということを言われたので、扱ったことのない短銃を使ってみることとした。そのうちもっと強くなったら単位が門の重機も扱ってみたいけれども、この世界にどのぐらいあるんだろう。

 もしかして【合成】スキルをレベルアップしたら、作れるだろうか。弾どころか、銃を。


 今回も、フォローパーティーを組み、カウンターでレベルチェックを受け、過剰戦力とやっぱり言われる。ですよねー。出口戻りの魔石【星の窟】を今回はもらい、早速第1階層に向かう。

「星の窟、久しぶりにきました。ここ、きれいなんですよね」

「そうなの?楽しみだな~」

「僕もです」


 階段を降りている最中、二人は私に支援魔法を山のようにかける。うーん、やっぱり頑張って基本ソロバトル。

 

 目の前にワープゲートみたいなものが現れ、そこに足を踏み入れると、そこは


 宇宙空間だった。


 一応足元に重力と床は感じるが、360度すべてが星空。浮いていないのに浮いているような感覚。

「これですこれ!楽しくないですか?出る敵は実体がつかめなかったり、アンデッドだったりするんですけど」

 珍しいほどに志摩のテンションが高い。今回は過剰戦力アオくんがいるから良いけれど、志摩と永長の二人パーティで挑むにはちょっとしんどいレベルだったらしく、ものすごく喜んでいる。

「あまり先に言ってしまうとつまらなくなるので、おとなしく後ろついていきますね~」

 すでにおとなしくないけれど、嬉しそうで何よりだよ。


 ◇


 ここは宇宙空間を歩いているようなダンジョンらしい。まず、1階層目は。

 見た目がわからない迷宮仕立てになっているため、ぼーっとして歩いていると、頭をぶつけたりなんか、いろいろ痛い。志摩はテンション高く、アオくんはにこにこしながら後ろをついて来る。これ、完全に楽しんでるな。私も楽しみたいわ。


 そんなかんじで歩いていたら突如背筋に寒気。

 警戒を強め天井を見上げると、星雲みたいなものが収束してきている。


「あれ、モンスターだよね」

「そうですね。先ほどから言われていた、星雲型モンスターでしょうか。これって攻撃当たるのかな。」

「試してみたらどうです?今回はチーズさんの銃関連のスキル伸ばすのも目的でもあるので、戦闘に入った時点で防音壁に跳弾を防ぐというか、銃弾が壁に食い込むような防壁を展開しますので、もう、自由に戦ってくれて大丈夫ですよ。」

「わかった、やってみる。」

 

 天井の星雲が結構大きく広がり、おおよそ直径3メートル。

 と思うと、突然集積、圧縮しボール状になり、こちらめがけて飛んできた。


 そしてその弾は短刀で戦おうとした私を器用に避け、すり抜け、トップスピードを保ったまま、アオくんめがけて攻撃をしかけた。

 が、さすが鬼教官。きっと収納から出したのだろう先日魚モンスターを成敗したときに見た長剣で、叩き落とし、上から突き刺した。

 

「なんなんですか、こいつは!」


 後ろで持ってきたおやつをほおばっている志摩が当たり前だというようにネタバレをする。

「あ、ここの星雲型モンスター、男性ばっかり狙うんですよ。女性は完全に無視します。なんででしょうね。おいしそうなんでしょうか?」


 それを聞いたアオくんが見たことない顔をしているんだけど、美少年のゆがんだ顔もかわいいよね。言ったら怒られそうだけど。

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