第7章 吉祥の白竜
第94話 吉祥の白竜(1)
兄が出先の国で発見した白い鳥竜種、ウララさん。
私のフリースペース内で居を構え、魔女さんにお願いした結果、
ウララさんがいるスペースは私と兄しかアクセスできないように制限しているため、安全な地として、卵をあたためている。
私自身は出し入れはできても、他の許可した人たちとちがって私自身は中に入ることができないので、取り出すと言ったら失礼かもしれないけど、フリースペースから出る時が初対面になるといった感じとなるが、申し訳ないのでやめている。
ただ、私が家主となっているため、会話だけはできるようになっている。
因みにアオくんは、種族が違えど異性、しかも抱卵中であるということから接近を控えている。
そこで問題です。
そんなに木の実のストックはない。穀物もない。さてどうするよ丸投げしてきたお兄様。
まあ、あの人は目標に向かって一直線、後ろはほぼ振り返らない。いつもこんな感じではあったんだけど。
私の行動範囲、ナットとミアカとアトルの中で一番良い穀物資源はアトルのトウモロコシだ。ただ、結構大量にいるので買い物をすると何を一体しているんだ扱いをそろそろされるようになってきた。「鳥のごはんで」とはいってはいるものの、割と限度がある状況だ。コイツ一体何飼ってんだ状態だ。
失礼にあたるので軟禁中にどんな食事をしてたかなんて聞けやしないし。
ウララさんは吉祥の白竜として、西方の山で祀られていた。先日兄が殲滅した竜さらいの竜は、対抗勢力の竜だったらしく、ウララさんの一族は、おそらく今もウララさんを探しているだろう。ただ、白竜の一族は繁殖力が基本的につよくなく、今でも約40個体しかいないということ。
吉祥の白竜が一族の中でたまたま同世代に産まれた相手と恋に落ち、抱卵するに至ったところ攫われてしまったことから、今どうなっているか心配でたまらないそうだ。
「私から呼び出しをしてしまうと、敵対勢力にも居場所を教えてしまう。もうどうしてよいのかわからないのじゃ」
いっそ兄チームに乗り込んでもらって殲滅してもらったらどうだ?と思うけど物騒だからやめておこう。
「私を祀り上げていた一族に連絡は取れなくても最悪構わないのだが、この子たちの父親だけには居場所を教えてあげたい。というか来てほしい。」
声しか聞こえないが、とっても、切実な声だった。
なんとかその相手だけに連絡をとる手段はあるのだろうか。特別な超能力みたいなやつは。
「ないことはないですけど、その魔法、僕も使えるには使えるんですけど、距離が必要となった場合、多分■■様しか使いこなせないんですよ。コントロール能力魔力量が結構必要で、この凍結魔法を行使しながら使用するなら瓦解する可能性があるので、どっかに大きな魔力供給してくれるものがあればあるいは」
そこで、アオくんの肩をポンと叩く。
「魔女さんに迷惑かけたくないから、アオくん頑張ってみない?」
「え?!」
「やろうよ鬼教官、アオくんのいいところ見てみたい。やろうよ。」
「ウララさんを、がっかりさせたくないし。」
ごり押しである。
ウララさんの旦那について、さらわれた事実から持ち物はすべてロストしてしまったことから、たどれるものは、卵たちのもつ遺伝子のみというなかなかの細い糸。
「ちょっと、1日ください。」
悩みつつも決意したような顔で、アオくんは私の期待に応えてくれるらしい。
◇
僕の魔力総量は結構あるが、巧緻作業となると、それにかかる魔力のコントロールを考えたときに、■■様は本当に感覚的な線で的確にこなしてしまう。僕は実際、そういうセンスのみでこの探索魔法を成功させるほどのセンスは磨けてはいない。やる前から実力不足はわかっている。其れを何で補うかが問題なんだ。
そこで、本当は、やってはいけないかもしれないが、アドバイスがほしい。あの師匠のストーカーから。
ウララさんには今僕は近づいてはいない。
ただ、探すにあたっては、きっかけをもらうために接触しなければならない。
というわけで、双子ならではのテレパシートーク大会を開催する。
『イオ、起きてる?』
『どうした』
『ちょっとチーズさんに無茶ぶりされてしまって、前にいった倉庫に住む白い鳥竜種ウララさんの旦那探しに協力しなきゃいけなくなったんだけど、追跡資源が卵しかないんだよ』
『卵に組み込まれた遺伝子の半分ってことか?』
『それそれ』
『そこまで難解だと■■様でさえ五分五分、世界の監視と魔力の巧緻作業の点を鑑みると救国の魔法使いのほうが適任じゃないか?』
『やっぱりそう思うよね。知ってのとおり一応連絡先としてチーズさんの兄のを知っているけれど、同行しているあの魔法使い、師匠の因縁の相手だけどちょっとだけアドバイスもらっても大丈夫かな。■■様に破門されたりしないかな』
『そこまでじゃないとおもうけど。もし何か言われたら二人で破門されよーぜ。向学心を否定されたらついてく道理もないし』
イオ、考え方が強かった。
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