第17話 異世界を知ろう/隣国へ行こう(4)

 キャンプ場の炊事場で着火剤をつかってライターで火をおこし、調理開始。

 

 雷魔法が成長したら副属性的に火も使えるようになるようなことを魔女さんがいっていたけど今は全くといって使えない。

 

 ナット王国は本当にいろいろ食生活が壊滅していたので、他国で代替え的な食物がないか探してみよう。そもそもジャガイモとかは地球でもそこかしこの国にあるので、きっとあると信じたい。


 たまねぎ、人参を炒め終わって水を入れ、煮始めるとどんどんいい匂いがしてくる。ジャガイモを煮崩れ防止で別にゆで、その横で白飯も炊く。今晩はゆめぴりかだ。


 今はいいけれど、この後私の食生活を支えていたものがどんどん減っていく可能性があるので代替え食品を発見するのも急務だ。とはいえ研究や交配の末にできた美味しい日本の米や野菜、果物に匹敵するものを探すのは骨が折れるどころか満足いくものが欲しければ、自分で作るしかないかもしれない。どこかにそういう国があればいいな。


 煮立ったところで火からおろしカレールゥを投入。溶かし込んだあとに再び火に戻し、煮込む。


 8皿分フルにつかったけれど余ったら保管しておけばいいだけだし便利~とおもっていたら、


 匂いに誘われ、宿主とその一家 


 宿の入り口あたりから こちらを 見ている。


 これは放置できない。声をかけざるをえない…。

「アオくん、宿主さんご一家を、呼んできてもらってもいい?ご一緒にどうですかって」

「了解です!」


 そうすると子供さん達が嬉しそうに走り寄ってきた。そしてそのあとを両親が追いかけてくる。

「私の故郷の料理なのですが、食べてみますか?」

 この場合の故郷は、大きな意味で地球だ。

 

 屋外にあるテーブルにコテージに備え付けてあった皿を持ってきて盛り付ける。福神漬けとラッキョウは今日はなくてごめんね。総勢7人、全く持ってキャンプ気分。さて、食べよう。


 両手をあわせ、いただく命に感謝し

「いただきます」

 因みにアオくんは私に倣ってこの日本の風習に付き合ってくれている。


 アオくんは一口食べるや否や「ウマッ」と声を発しがっついておかわりをしてくる。


「本当にいいんですか、ありがとうございます。」

 宿屋ご一家改めドニさんご一家も最初は遠慮がちに、その後ガツガツと平らげ、結局8人前あったカレーはまたたくまになくなった。


「ごちそうさまでした!」

「おそまつさまでした」

 みんないい笑顔で私もご満悦だ。道産食材消費拡大ありがとう。異世界だけど。

 

  そして、私の推しカレールゥは異世界共通だった。

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