第307話 ボレイリョウ(26)
テミスの申し出を断る必要もないため、ぜひともとお願いすることに。血が騒ぐのか、わからないけれど。
「任せた!頼んだよ!でも気を付けて」
「もちろん」
「僕もいくよ。いやーそれにしてもデカい、これはさすがに狩り甲斐がありそうだ」
「オレは基本後方支援でいくから」
そこまで打ち合わせしたところで、アルティメットライムドラゴンが大きく歩みを進めだす。一歩進めるごとに地響きと砂埃がたちのぼる。
「あ、戦闘前にちょっとういと話したいんですけど、ハウスからだしてもらえますか?」
「いいよ、はい」
【無限フリースペース】に手を突っ込むとういが飛びついてくる。ほんとうにもこもこしていてかわいいったら。抱っこした状態で顔を思うさま舐めてくるうい、くりくりとした眼が愛らしい。そしてアオくんの顔を見るなり、アオくんの腕に向かって飛び込んでいく。そんなに好きか!そうか~……。
地響きが20秒に1回程度に響く中、1人と一匹は何かしらの意思疎通を開始したようで、しばらく見つめあってたとおもったらアオくんの顔を舐めて、何かを了承したみたい。
「チーズさん、今回の作戦でういに回復補助のバックアップをお願いしました。自動的に支援してくれているのですが、ちゃんと話しておいたほうがいいかと思って」
「え、それってどういう」
「チーズさんとパーティーを組んでいることで眷属というか使い魔とかそういう立ち位置にいるういのスキルの、魔力の自動回復を改めてお願いしてみました。平時でもチーズさんはその効果をもっているんですが、もしかして気が付いてな……?」
「スキル『散歩』の機能だよね?自動回復。外に出して散歩しているときだけだと思ってた」
アオくんがちょっとこっちをみて間をつくる。え、嘘だろみたいな顔してる。私がういと遊ぶだけ遊んで、スキルとかちゃんと見ないでういまかせにしていたことがバレた顔だ。はははは。
「……見てもらったらわかると思うんですけど、『散歩』、パッシブスキルなんですよ。要するにチーズさんの歩みには常にういの歩みがついているということであって」
「わかった!【無限フリースペース】にいながらにして私がパーティーに加入していれば回復支援ができるってこと?!」
「そのとおりです。しかも『散歩』のレベルが上がったことにより範囲魔法に効果が上昇、その範囲は『組んでいるパーティー』になっているわけです。【無限フリースペース】にいる間は表にでているときの半分ぐらいの効果になってますけど。チーズさん、たまにはういのステータスもちゃんとみてあげてくださいね、こんなに頑張ってるんですから。あと動物言語のスキルアップも図ってください」
「だってうい、話かけても私にだけ返してくれないし」
「それは出し惜しみですので諦めてください」
本当に私以外の人たち、その中には天くんも含まれてそうなんだけど会話や意思疎通、しっかりしてるようなんだよな、うい。まるで頑なに『自分の犬としての立場』を弁え続けているというか、アオくん曰く出し惜しみらしい。正直無駄吠えもしない。
そもそも私は常に魔力の消化をするような生活はしていないわけで、回復がどうこう考える前にそもそもが減ってないから気にすることもなかったわけで。ってこれは言い訳になるか。
ういについて私が知っているのは、寿命が延長されたこと、アンデッドに対する神聖魔法がバグレベルに強いこと、そしてその効果を広げるための巨大化。
アオくんが言うにはほぼほぼ天くんと同等ぐらい内言語は育っている、らしいけれど、私には無言を貫き通し、返事はかわらず顔を舐めてきたら肯定、あくびをしたら都合がわるい、答えたくないときは無言またはそっぽを向く、といった相変わらずな感じだ。
加えて今この怪獣的なアルティメットライムドラゴンが向かう先、首都……オイスターの首都ってなんていうんだ……地図を確認するとボレイリョウから北東におおよそ100キロぐらい……ええと、マガキ。そうか、マガキか。
そこに到達するまでの時間、戦闘に使える時間を考える。だいたいこの歩みの速度であれば目測だけど到着まで3時間程度かな。
「大体2時間程度で倒せれば影響が少ないかも」
「よし、攻撃準備に入る」
そう言うとテミスは両手に直接エネルギーを溜めだす。もしかして武器、素手なのかな?
何事かと思っていたところにイオくんからのバトル開始前のすり合わせが入る。
「チーズさん、オレは足場作成と支援で最大効率出すことに全力を尽くしますので、さっきアオからもらった武器とか、魔法とかで武力支援のほうをメインでやってもらえると。位置を特定されない努力はしますので」
「わかった、できる限りのことを頑張る。あと、回復最大効率出すためにういとお外で全力『散歩』、これでいい?」
「助かります。魔力補給アイテムはあるにはあるんですけど、支援による回復のほうが体に負担が少ないので」
「なるほど。うい、頑張ろうね。危険を感じたら即、ハウスだよ?」
そう話しかけるとぶんぶん尻尾をふっている。
そしてもう1つ、これはアオくんにお願いしなければいけないことがあった。
「アオくん、炎の魔法で800℃以上出せる?確実を見込んで800℃」
「ちょっと工夫が必要ですが、出せない温度ではないですね」
「あれの主成分が牡蠣の殻で変わらなかったのであれば、その温度が融解温度になるんだよね。万が一私の雷を打ち込んで暴発とか目も当てられない状況になったら困るから、600℃から800℃の出力で外殻削ってみて。溶けたらラッキー、よりよい方法で戦闘の運用できる可能性が広がるから」
「わかりました、やってみますね。ではいきます、テミスに後れをとりたくはないですからね」
上空にすっくと立っているテミスを見上げつつ、アオくんは足場を蹴った。
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近況ノートを書きました。この話を投稿し始めて1年が経ちました。早いものです。
近況 皐月 -
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