第88話 シラタマ/鳳鳴山(2)
「さて、お前たち。私の軟禁は解かれたが、ここにいるとこの国の連中に迷惑がかかる。私が移住しやすく安全な座標は知っておるか。できればまた狙われるのも面倒なのでな」
時間は夜。山頂近い座標であり、多少キャンプができるぐらいの開けた地にこの鳥竜が佇んでいた。周りは割と開けていることから、火をたくことができた。
申し訳ないが
鳥竜の名はウララといった。ちょっと特殊な生まれであるために、別の群れに囲いこまれ誘拐され、ここにいる。
「しかしこんな入出国の厄介な国で移動か…変な動きをすると処罰される可能性があるし……あ!」
妹が、愛犬ういを自分のフリースペース内で飼っていたことを思い出す。賢きエクソシスト・カニンヘンダックスフンド。
今完全に人払いされた状態かつ割と安全というか隠匿されていて外からの関心による干渉がおきないのは「ナット」となるが、外からは発見できず、入ることは困難だ。けれど、この竜と一緒に移動することは可能なのか?あとさすがに王に伺いを立てなければならない。
俺が連絡を取る手段をもっているのはアオのみ、イオにはない。しかもイオはノリに拒否反応しかない凍結の魔女の近くにいる。
どうしたものやら…やっぱりアオに連絡を取ろう。
「ちょっと通話してもいいですか?」
そう断り、アオに連絡をとる。いまあいつらがどこにいるのか知らないが、出てくれ!
1秒…2秒…応答した、が、聞こえてきたのは寝ぼけた声。
『
寝てる時間帯だった…。申し訳ないがもう一つ申し訳ないことを頼まれてくれ。
『行き場のない会話ができる竜がいて、ナットで匿ってほしいので、一時的にチーズさんのフリースペースに居住する場所を作ってほしいと。
妹の部屋の前にいくとういに気づかれたらしく、ういが体をブルブルしている音が聞こえてくる。今日もかわいいね~とか言っているのが聞こえてくるので、完全にアオはういに懐柔されていることがわかってしまった。かわいいもんな。
そういえばアイツ、人型にもうなれるって言ってたな。
『兄さんおはよ…』
寝てたのがわかる妹のざらついた声が聞こえてくる。スマンな。
『ウララさん、わかりました。貴方の一時的なお家を建てさせていただきますが、希望とか寝具とかなんでもイマジネーションで作れるのでおしえてください。あと、ご飯何食べているか、教えてください。』
妹の許可を得てから、画像通信をつなぐ。これは魔石によるワープ通信なので、特に電波が飛ぶような仕組みとなっていないがために探知の可能性は皆無とのノリの見解。結局報告としては倒してしまったと言ってしまえば済むわけで。あと、大量の竜の肉は納品できるわけだし。
そして、ウララから妹へ要望が伝えられたあと、大きな区画にそれは作成され(シルクでできたふわふわの犬のベッドみたいなのが所望されて作成されていたが、そういう嗜好なのだろう)、さっと移動してもらうことになった。因みに主に食しているのは木の実と穀物らしい。この体躯で食べるとなると、量がえげつなくないか?
「少しだが、世話になったな。引き続きよろしく頼む」
そう言うとウララは少し首を上げ、思案したような表情をしたうえでこちらを向き直る。
「よし、ユウといったか。今回の礼じゃ。お前に我が子の一人を選ばせてやろう。役に立つぞ?」
マジですか。
突然チュートリアルで初期パートナーを選ばされるような展開。面食らってるとノリが声をかけてくる。
「竜は卵の状態で契約を結ぶ以外ではなかなか眷属にはできない仕組みになっているので、これすごくラッキーですよ?」
とりあえずどうすればよいか聞くと、好きな卵を選び、手を当てれば契約は結ばれるという。
見た目の特徴はかわらず、また、鑑定をしてみても『竜の卵』としか出ないガードぶり。これはもしや完全な運か。
となると、やっぱり、センターでしょ。
「真ん中の子にします」
では手を当ててと言われ、手を当てると少しの温かみを感じ、同時に卵が輝いた。
「では孵化をまつがよい。独り立ちできるようになったら、お前のところへ向かわせよう。」
そういい、目を細めるといつまでもその娘を寝かしておくのも心苦しい、その新しい部屋とやらに移動をお願いする、とのことなのでそっと触れ、妹が新たに作成したウララだけのために造られた部屋に移動させる。
「またな」
「また」
「助かった」
そう挨拶し、そっと移動させる。
『兄さん、あとはこちらで引き受けるから!安心してやりたいこと続けてね!』
『何かあればまた連絡くださ~い』
アオに至ってはういを抱っこして手をもってその手を振っている。ほんと妹とアオとうい、仲良しだな。
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