第146話 ミソノ山/偵察隊(4)

 凶鳥が居た場所は空洞の端であり、いなくなったあとはまさに鳥の巣、という作りになっていたのだけれど、その奥には空洞が続いていた。ゲームとかで良くある討伐したら道が開ける系のアレだ。

 

 そもそも私が落っこちなければここの道は知れなかったわけだし、アオくんがかけてくれたバフがなければ先刻埋葬したおそらくミアカの人たちと同じ末路を私も辿っていたのであろうから、高ランクの人がたまたまこの山を訪れて山全体を先にスキャニングをする以外は偶然以外でこの道を知ることは無理だと思う。

 

 しかも、ソロ出来た場合念動力魔法をどうにかできないと、あの鳥の対処ができない。こんなのどかな畜産農村となったミアカの近くにあっていい山じゃない。


「とりあえず、ここ進んでみよっか」


 そう言いつつ、先に進む。幅1メートル、高さ2メートルの道が続く。光魔法を使わなくてもヒカリゴケのようなものがびっしり貼り付いているために明るく、滑ることにさえきをつければ歩ける。ここは山と認識されていたが、実はダンジョンに該当しそう。

 

「この世界のダンジョンって、【人工】・【神代】・【自然発生】の3分類があるんですけど、これ、【自然発生】っぽいですね。アトルのも自然発生ダンジョンですけど、ほぼ未手つかずが今発見されたうえに、こんなところに高レベル適性なものが人知れずあったとなると、他の国にもこういうところありそうですよね」


 道幅が5メートル、天井が3メートルぐらいに広くなってきた。そして足元が土から砂利にかわってくる。モンスターではないトカゲ的なものも走っている。鳥の巣から大体500メートルぐらい歩いたと思うけど、大きな変化はまだない。

 

「あとでちょっとこんな危険な山というかダンジョン放置していた理由、王に聞いて見ようか。あれだけの人が転落して行方不明者が出てたってことだから普通調査したり対応したりするよね。しなかったのか、できなかったのか、どっちだろうね。」

「調査団まで行方不明になってそのまま放置とかしそうじゃないですか、この国。勝手な想像ですけど。」

「確かに、地下資源全放出するまでやる無鉄砲王国だからね…。その時の政治の在り方によっては、あるかも。」

「現王ならちゃんと対策しそうですけどね…って正面、行き止まりじゃないです?」

「ほんとだ」


 ほぼ100メートル先突き当り、ヒカリゴケが見える。周りに気を付けながら、その壁に向かう。


「ねえ、あそこ絶対何かあるとおもうから、やっぱり手、つなぐ?」

「…仕方がないですね…」

 

 さっきのこともあって私もアオくんも手はほこりっぽく汗ばんでいるからなんとなくざらっとした。そして行き止まりに行き当たる。天井もそのままの高さ、道幅5メートルもかわらず。もしかしてこの苔を取り除けばなにかが見えてくるかもしれない。塩素系漂白剤か?いや、こんな地下でそんなもんつかったらこっちの命が危ない。

 

「ちょっと違和感を探りますね…、あ、突き当り左から2メートルの足元になにか、ありますね」


 便利だな。と思いつつ、確認されたポイントまで歩みを進め、【地】属性魔法の応用で砂利を避けたのだ。そうすると、足元に、センチ角の幾何学模様が記載されていた。小石をそのうえに投げてみても何も動かない。

「これ、人感センサーかな?」

「なんですかそれ」

「人が乗ったら起動するってやつ。」

「やってみます?」


 そういうとアオくんは問答無用でその模様を踏んづけた。「カチ」という音が聞こえると同時に、今まで私たちが歩いてきた方向から、大量の羽音が聞こえてきた。

「ねえ!なんか、くる!なんだろう!」

「とりあえず【防御魔法】かけたうえで【防壁魔法】はってみますよ!」

 目の前に透明の防壁が現れる。ぴったり壁際に隙間がないようにきれいに張られている。性格。


 そこから30秒程度、異変は眼に見えた。大きなトンボのようなもの、羽虫のようなものが大量にこっちに押し寄せてくる。向こう側が見えなくなっている。

 

「ちょっとこれ、ぼくの経験値にするのもったいないからパーティ組みなおしますよ」

 

 パーティ編成がフォロー編成から通常編成に切り替わる。だからといってアオくんのステータスを覗き見れるわけではないんだけど。そんなことをやっているうちに、先頭の一軍が到達、【防壁魔法】にぶつかりそのまま絶命、足元に大量に落下していく。えぐい。


 そのまま勢いはとまらず、【防壁魔法】の上1メートルのみクリアに見えるけれど、そこから下は本当に、虫の残骸があり得ないほど大量に積み重なっていく。下の方から灰色の魔石に変化してはいってはいるものの、なんか見ちゃいけないものを見ている気になる。あとなんかたまにドロップも混ざっているよう。


 あまりのことに呆然としてみていたら、5分ぐらいで、虫の襲撃は止み、先ほどの起動スイッチの場所の真横に転送魔方陣が浮かび上がった。

 

「もう【防壁魔法】解除していいですよね。」

「多分、これで終わりだよね。」


 そう言ってアオくんは【防壁魔法】を解除、足音にはザラっという大きな音を立て大量ドロップ品の山が崩れたうえで残された。この虫のドロップ品は、銀色のリング。30個は出たんだけど、虫産というと微妙な気分になる。


 相談のうえとりあえず【無限フリースペース】にドロップ品をすべて放り込んで、転送魔方陣に足を踏み入れることにした。

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