第147話 ミソノ山/偵察隊(5)
チーズさんは繋いできた手を一向に離さない。なんかもういっそ慣れてきた。いや、うそです。
転送された先は、砂漠。これ、未踏破ダンジョンだよどう見ても。遠目にサンドワームが何匹も、もいもいしているのが、見える。
「なにあれチンアナゴみたーい」
チーズさんがわけのわからないことを言っている、なんだ、チンアナゴって。
「チンアナゴはいるのに砂を泳ぐ魚はいないのか~!戻りの転送魔法陣、ないから進むしかないね。ただ、私は砂漠を走れそうな車はさすがに持ってきてないよ」
「あの家の前にあった『車』って砂の上走れるんですか?!そしてどうにもこれ、踏破するしか帰れないダンジョンかもしれないですよ」
「2人と一匹で戦えるダンジョンと信じて進むしかないってことだね!ただ、砂場にういは出せないな。あんな車高の低い犬には酷でしかない」
しかし、なんで葡萄の木探しに来てこんなことになっているのか。
一応、近さでいうと師匠とイオに連絡を取っておくほうが安全か?結局このダンジョンの対応適性もレベルわからないけれど、明らかに低ランクダンジョンではないことは確実だ。
なんとなく足を踏み入れたら落下とかキツすぎでしょ。
「念のため僕たちの居場所とこのダンジョンのこと、次休憩するときにイオに伝えときますね」
「ありがとう。いや、ほんと生きてて良かった。アオくんに辛い報告させるところだった」
この砂漠は闇雲にいくと体力だけ奪われるものと思い、魔力を走破させ、とりあえずの目的地を探す。目の前2キロ、サンドワームの向こう側に転送魔方陣の反応はある。謎の日差しもあるため体力を奪われるのを防ぐために紫外線カット魔法も念のためかける。そもそもこれ、紫外線があるのかどうかもよくわからないけど、日光に類する場合思い切り体力をもっていかれて頭痛がおきるとかがあっても大変だ。
とりあえず、転送魔方陣を目指し進むこととなった。
こう考えてみると、チーズさんと
「今この世界でいくつぐらい未踏破ダンジョンってあるんだろうね!初めてが当たるって本当にラッキーだよね」
「僕は最後まで踏破できるものなのか結構心配ですよ。高ランクダンジョンだと中ボス時点で『出口戻りの魔石』と『進行地点までもどれる魔石』がドロップするとも聞きますが、あの凶鳥って今まで僕たちがいったどのダンジョンのボスより強かったですが、『出口戻りの魔石』、出なかったですよね。」
「とりあえず今日の目的、中ボスまでにしてみる?そしてあのサンドワーム私がやってみてもいい?」
「どうするんですか」
「ここ、空開けてるから、全力で雷魔法撃ってみよう見ようかと思って。多分仕損じたら私が使い物になっていない可能性があるから、フォローよろしくね!」
物騒な!って思ったけどそういえばそもそもチーズさんって元の世界でも狩りとかしているような人だった。しかもここ、ダンジョン内の亜空間に形成されている砂漠だから多少どう暴れようと、外界に影響が出ない。
「フォローしなくて済むことを祈ってますよ」
「雷の威力に期待してて。レベルだけはあがってるから、結構いいとこいくとおもうだよね。MP切れてもういと散歩したら回復できるし。砂漠じゃ散歩できないけどね~」
このダンジョンは大型のモンスターと、ギミックによる小型モンスターが現れるだけで、細かい戦闘はない設計のよう。なので、あまり疲労感もなく、サンドワームの近くまで寄ることができ、砂山の陰に姿を隠す。
「サンドワーム、2匹かな。」
「2匹ですね。
「ありがと」
しっかり目視できる場所で潜ったり頭を出したりして砂の中を泳いでいる。チーズさんは最近ターゲッティングのスキルを学習したために、視力強化とともにそのスキルを行使してみているようだ。
僕はというと、パーティーの組み方を通常からフォローに戻したうで、全力で雷魔法を撃つという話なので、間違っても当たりたくないのでチーズさんの背後に控えつつ、補助魔法をマックスにかける。ついでに【気配遮断】もしてみる。
まだエネルギーの集積の偽装はチーズさんはできないうえに、【気配遮断】とちがってパッシブスキルとして身につくものなので僕が補助魔法を使ったところでチーズさんの魔法の予備動作に対しての隠ぺい効果はない。というわけで、完全にグッドラック、という感じになっている。
大きな砂山の後ろで、2匹のワームにターゲットをつける。範囲魔法の合図だ。まだ気づかれてはいないが、時間の問題だ。
チーズさんは一気に魔力をチャージする。現状使用可能な雷魔法マックスまで充填するには、約5秒。その間、チーズさんとの間合いを詰められないかひやひやはしているが、突破されたとして、サンドワーム程度であれば実際には僕の敵ではないから支援は可能。
全力で支援と応援をしよう。頑張れ、がんばれ。
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