第54話 ナット/アラユル順応(4)

 ドッグダンスとは、文字通り犬とダンスをする競技で、音楽にあわせて飼い主とダンスをする競技だ。

 ダックスの場合足が短いべリー背中長いドッグなので、背中に不安があるため、アジリティ競技よりは向いている。実家に帰ってきてから始めたばかりなので、ツイストという足の間をくぐってスラロームをする技をなんとなく覚えさせたぐらいだ。まだ何の曲でダンスして遊ぼうか考え中。


「よし!うい!チーズを驚かそうぜ!」

そんな声が聞こえてくるのだけれど、兄さん高レベル動物会話すでに持っていたりしないよね…?

  

 ◇

 

 車庫、納屋の電気系統をこの世界基準に切り替え、次は牛舎に差し掛かる。時間が止まっていたタイミングの都合上、まだ、ごはんには時間がある。

 次の搾乳までにももう少し時間があるが、従業員はもとより酪農ヘルパーさんまでは転写されていないし、基本的な人手が足りない。来てすぐのときはアオくんが獅子奮迅の働きを見せてくれた(多分魔法もうまく使っていた)おかげでするっと終わったけれど、ぶっちゃけ時間が動き出してしまうと、うちの牛たちの世話をしながらレベルアップやランクアップするのは結構厳しい。

 

「この、圧倒的担い手不足、どうしようかな~」

 電気系統の再構築をしながら、つぶやいてしまう。実際、現実問題だから。圧倒的人手不足。


 そう思っていた矢先、兄がういを抱っこして登場。

「マニュアルは作ればいいんじゃないか?そしてこの世界の人に事業を移譲する。そうすれば、この国の産業も増えるし、お前の時間も増えてウィンウィンだよ。」

 魔法使いさんが「あ~なるほど」と言う。マニュアル、あれば一定の程度内容を伝えることができる。 

 「作れますよ。あ!もしかして、このステータス画面にインストールされたマニュアルみたいに、共有できたりするんですか?」

「できるね」

 魔法使いさんにマニュアル作成し渡せば、担い手となる人にマニュアルを配布できるということらしい。

 まず、マニュアルの作成方法は、他のマニュアルを表示した状態で、右上にプラスマークがでるから、そこを押して「新規作成」から作れるよ。口頭記述でも、動画でも、文字入力でも好きな方法で入力できるから、試してみて、だって。

「じゃあ、わかりやすく明日1日お世話のサイクル録画交えながら作ればいいですね!仕事に困らないマニュアル作りを心がけます」

 今日の夜と、明日一日作業助けてくださいね~と言いつつ。家の2階は泊まり込み実習生のために4部屋あるから、この人数であれば十分だろう。ちなみに私と兄の部屋は1階にある。

 

 そして魔法使いが続ける。

 「マニュアルの作成と並行して、この国で比較的勤勉な村を王にピックアップして教えてもらおう。できれば辺境である方がいい」

 都市部の人間が今回の事件をほぼ招いているから、原因にほぼ関与していないのに凍結に巻き込まれてしまったぐらいがちょうどいい。

 「僕がイオに連絡しますね。僕たち双子なんで、遠隔で思考共有してディスカッションができるんですよ」

 なんと便利。


「チーズが持ち帰ってきた調度品のおかげで、今回のこの家をこちらの世界になじませるまでもなく、1つの小さな村ぐらいは凍結を解いても大丈夫なところまで国が安定してるんだ。お手柄だよ」

 そう褒められ、ちょっと、いや、だいぶ嬉しかった。


 

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