第189話 秘境イノハナ(2)

「わたしのリスクマネジメントが!批判を受けるとか!意味が分からんのじゃが!!」


 弟子たちの冷たい目線に気が付いた魔女さんがそんなことを口走る。

 ちょっと思うけど、というか前々からちょっとどころか思っているけど、どちらかというとこの凍結の魔女のほうが救国の魔法使いより問題のある魔法使いなのでは?

「確かに師匠の拠点の管理者、全部、双子だったな、って思いましたよ」

「双子が好きなのかな、ぐらいに思っていましたが、そういうわけじゃないんですね」


 少なくとも、アオくんとイオくんは軽くショックを受けている様子。確かに「自分たちだから」よりも「双子だから」が先に来るとすると、今まで感じていた親愛の情?に亀裂が入るっていうのもわからなくもない。

 いや、もしかして軽くもない?!


「……わかった。そう思われても仕方はないな」

 そう言うと、魔女さんは右手でアオくん、左手でイオくんと手を繋ぎ、菌糸でできた陣を見据える。

「ちょ…師匠!」

「離してください!」

 そうじたばたはするものの、その掴む力は細腕に似合わず強いのか、振りほどけてはいない。

「チーズ、お前と天は一旦ワイナリーの確認をしたあと兄と合流しておるがいい。わたしはこの弟子どもと対話しつつ虹竜と永長を連れ戻してくるわ。ちょっとわたしの言葉が不用意過ぎたからな、こいつらにどういう意味があるかわからせてから戻る。あと、二次災害をおこさせないためにもこの部屋はだれも立ち入らせるな。頼んだぞ」


 そう言うと、魔女さんは弟子2人を連れて育苗部屋の陣に飛び込んだ。

 陣は淡い光を放ち3人を吸収、再び静寂が訪れた。


「あおあお、閃ちゃんたち助けにいったのかな?」

「天くんは私と一緒に帰ってくるの待とうね」

「うん!でも、危なくなったらわかるから、そのときは助けに行くね」

「万が一そんなことがあれば、魔女さんが嫌がるのは百も承知だけど、兄と魔法使いさんと一緒に助けに行こう」

「百も承知ってなに」

「わかってるってことの強い言い方かなあ?」

「ふうん」


 納得したのかしていないのかよくわからない天くんと次の行動を起こそうとしたとき、ノナが戻ってきた。

「主様、無事でした!あれ?凍結の魔女とそのお弟子さんの双子はどこに」

 ノナが不在の間のやり取りを伝えると、「要するに内側からしか破れない防御結界を張ればいい、ということですね。わかりました。やりましょう」と言ってくれた。この竜族が何が得意なのかはわかってはいなかったけれど、そういう魔法が得意範囲の一つらしい。

 そして、ウララさんには危険なのでこの部屋には立ち入らないよう進言し、了承を得たうえで、なにももう、やることがなくなったので私たちも次の行動に移ることとなった。


 そういえば、わたしがこの世界に来てからアオくんが一緒に居ない時間ってほぼなかったし、もしかしなくても頼り切りではあったから、結構、ヤバイ?!いくら強いとはいえ、天くんと一緒に行動って不安しかない。これ、もしかしなくても私に対しての試練でもあったりするんだろうか。

「天くん、今晩はウララさんのところに泊まって。明日の朝迎えにくるから、葡萄畑見に行ってから、兄さんたちのところへ行こう」

「チーズはどこに泊まるの?」

「私の家だよ。天くんせっかくの里帰り、お母さんと一緒にいたらいいよ」

「わかった」


 ヤケに物分かりがいいな~っておもったんだけど、どうも目の前でアオくんが魔女さんに連れ去られたことが少なくともショックだったらしい、と後程ウララさんが教えてくれた。

 私が立ち去った後、天くんは泣き始めてしまい、連動して他の4人も連動してしっかり泣き始めたそうで、ウララさんとレイさん2人そろって見た目だけ大きくなった幼児をあやすのに大変な目にあったらしい。申し訳なさすぎるが、それだけアオくんに天くんがなついている様はかわいそかわいいな、とか不謹慎ながらにも思ってしまった。


 そして今晩帰る我が家も、ほぼ管理をイオくんにまかせっきりにしているので、帰るのが久しぶりすぎるな~と漠然と思った。久しぶりの我が家は鶏以外動物がいなくなっているうえ、音がないし、匂いも変わっている。そりゃあそうだ、ずっと私が家でやってきた酪農業を分割して人任せにしてしまったのだから。

 なんかもう、寂しい気分になったのでういをハウスから出して、ものすごく愛でて寝た。虹竜にういが願った願いのために寿命が延びた、らしい。目に見えた変化はなにもないが、疑っているわけではないが、本当ならいいな、とも思う。結果がわかるなんて数年後じゃないか、って思うので。


「ういは今日もかわいいちゃんだね~」

 そう言いだっこをすると、ういは私の顔を舐めてくる。本当に頼むよ虹竜たち。


 久しぶりの1人はかなり手持ちぶさたで、こんなに集団行動に感化されていたんだなあ、と自覚する。大学のときなんて、ほとんど同じゼミの人としか、いた記憶はないし、1人を苦痛に思ったことすらなかったというのに。


 正直今、自分の家に1人、ものすごく、寂しい。寂しすぎて動物言語のスキルを上げようか悩むレベルで寂しい、とかおもったけれど、私の動物言語ってあげれるところまで上げていたことを思いだし、また、ちょっと落ち込んだ。

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