第221話 密室ノ会・祈(14)
コウコさんは深紅の魔石を足元の陣の真ん中に1つ、落とした。
そうすると、どこに収納されていたものなのか、演台のようなものがどこからか2台現れた。
「これはこの国特有の本を使った探索魔法に使用する演台だ。魔法の本置きと思ってもらえたらいい」
その魔法の本置きは、1台は僕の前、もう1台はコウコさんの前に現れている。早速コウコさんはさっきとは別の本を演台の上に置き、僕にもう一冊本を渡してきた。
「ほら、この図書館の探索に使う魔法の本【グレード1】だ」
「この本、グレードはいくつまであるんですか?」
受け取りながら質問してみると、あっさり答えてくれる。
「これは【グレード5】まで。5を取り扱えるのは王のみだよ」
「コウコさんも読めない本があるんですね」
「【グレード4】があれば探索は出来るのさ、読むことはできないけどね。というわけで一般人が触ることが許されるのが【グレード1】から【グレード3】。ただ、探索魔法を扱うのは私の許可を得なければならないからね。わたしが不在の時は王の許可となるから急に難易度が上がるね」
「嬉しいんですけどこんなに聞いちゃってもいいんですか?」
「あることを知ったところで、どこにあるかわからないだろうし、条件もわからないだろう?問題ないね。しかもここまでも私だってバカじゃあない、相手を見て発言してるさ。碧生が成年になって、今のまま素直に伸びてくれてさえいれば【グレード3】への道が開けるだろうね」
一体【グレード3】となるとどの程度の本が読めるんだろうか。師匠にわりとボロクソに「激昂すると危険人物」的なことを言われたばっかりなので、コウコさんが言ってくれることが素直に嬉しい。
「探索本【グレード1】だと、このフロアと上のフロア、一般書が所蔵されているエリアのみの探索となるが、君がいままで学んできたものと照らし合わせるに、知らないこととか知りたいことがまだまだありそうだから、特別に全量複写してあげるから。まあ、君を見てると次来る時までもたないだろうけどね」
「はははは…」
あからさまに本の虫っぷりがバレている。
「じゃあ、そこに「探索本」をセットして、読みたい系統の本を考えながら魔力を籠めて。一つ伝えると、読みたい系統の本以外にも、本側が読まれたいと反応するもの、魔力のパターンに反応するものも混ざるから、それは本たちの意志だ。あわせてちゃんと読む様にな」
「ここの図書館の本、意思があるんですか?」
「むしろ作家の意志、かな。本を形どって50年も経つとだいたいそうなるな」
「面白いですね、シラタマの書庫」
「だろう?じゃあやってみて。探索のオペレーションは全部本に組み込まれているから」
「わかりました」
楽しそうにニヤニヤしているコウコさんを横目に、魔力を籠めはじめてみる。同時に横でコウコさんも何かを展開している。
「防御結界張られているからな、全力でいっていいぞ、全力で。じゃないと、君を求める本たちが反応しきれない」
「やってみます!」
最近は杖の補助に使うことが多かったから、初めての「魔法の本」、どうやって魔力を流していけばいいのだろう。コウコさんはもうプロセスがわからないほど自然に魔力を流しているから、自然でいいのかな。
演台に置いた本の両横に手を置き、少しずつ魔力を本に流してみるが、反応がない。
「もっと遠慮せずにガンガンいけ!焼き切れたりしないから。因みに杖と同じように本で殴って戦ってた者もこの国の歴史の中にいる」
「焼き切れるってなんですか?!そして殴ってって本の扱い的にはどうなんですか」
「はははは、どうだろうな。よし全力でいけ」
そう言われ、もうちょっと魔力を籠め始めてみる。師匠や姉ほどではないにせよ、僕もそこそこ力はある、と自覚している。でもそもそもこの国では
観念して全力で魔力を流し始める。読みたい本、僕に必要な本、僕のの元に集って、と願いながら。
「君は貪欲だなあ!」
後ろからそんな声が聞こえる。本に僕の魔力がどんどん本を経由して図書館の規定フロア中に広がり、網羅する。
まだまだ魔力を流すと、どんどん魔力密度があがっていく。
「想像以上だ、どんどんいきたまえ」
それを続けていて「しくじった」と思う瞬間がきてしまった。
先日起こした魔力暴走、生命力が削られる、あの感覚だ。
やばい、師匠に叱られる。
そう思った刹那、コウコさんに頭を本で軽く殴られた。
「君は暴走経験者か。見どころありすぎだな?!」
ゲラゲラわらっているんだけど、こっちは笑いごとではない。
「探索本は魔力を限界まで使うからな、暴走経験者だと暴走するわけだよ。気にしなくていいぞ」
「気にしますよ?!」
「ここで本を魔法探索するたびに君は魔力暴走を引き起こすとおもうぞ。私が止めてやるから気にしたら負けだ。そしてどうだ、君が求める本、君を求める本。ざっと見て500冊超、これは結構楽しめるな」
コウコさん側の本の上にはステータスボードのようなモニターが出現、そこには探索された本のリストが表示されていた。
しかも、言われた通り僕に貸与されている【グレード1】の本を閉じたとたん、僕の魔力がそのままそっくり戻ってきた。
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