第124話 アトル/星の窟(5)

 ういの大活躍により一撃消滅したゴーストからは、黄色と藍色の混ざった魔石が大量に、[薄明弧のピアス★★★]が10点、[紫光のベール★★★★]が2点のドロップ。

 アオくん曰くういがボクいらないと言っているとということで、[薄明弧のピアス★★★]をみんなで1点ずつわけあい、残りは私の【無限フリースペース】へ。

 [紫光のベール★★★★]はこのフロアでのレアドロップだったらしい。


 その後、第3階層は回復魔法使用不可フロア、第4階層は火の使用不可フロアであり、第1階層、第2階層よりその条件は厳しく、誰がどうやって試したのかわからないが、先人に感謝しつつ、ありがたくその知恵を使わせてもらい、また、大量にドロップを得ることができた。

 このダンジョンはゴースト・死霊系がでるがために、エクソシスト犬がその対象フロアでは大活躍。私とういは通常パーティーを組んでいるので、レベルもあがり、経験値もきれいに分配され、感謝でいっぱいだ。このお返しは必ず。


 そして、このゲートを抜けたら中ボスフロア。

 事前情報によると、ここでは「トワイライトゴースト」という名のモンスターが中ボスらしい。今回は素直に出るか、レアが出るか。いざ尋常に勝負!となることにはかわりない。

 

「とりあえず支援魔法はマックスにかけておきますね~」

 アオくんと志摩の2人からの厚い介護をうける私とうい。

「そもそもゴーストって名前な時点で、ういが一撃必殺してしまうのじゃないのかな。」

「塵すらのこらない可能性がありますね」

「でも、6階層以下は普通にモンスターがポップアップしますので、 気にせずいっちゃいましょう」

 

 ◇


 5階層へのゲートを抜けると、そこには何もいなかった。あちこちを見て歩いても、本当に何もいない。ただ、中ボスを倒していないがために、次の階層に進むためのゲートもない。

 あるのは石造りの部屋のみ。天井は吹き抜けているがこのダンジョンに入って初めての青空。足元は大きな石が段階的に置いてある。

 

「……もしかしてここも条件がいるんでしょうか」

「アトルに長くいますが、聞いたことがないですね。でも、4階層まですべてギミック解放して踏破したという人も聞いたことがないので、そのせいかもしれませんね。」

 足元でういはおとなしくこっちを見ながらしっぽを振っている。

「最初は男性、2つ目は光、3つ目が回復、4つ目が火で、いま女性も犬もギミックなし、と。で、初めてここのフロアに来て室内フロアかつ明るい、となると、闇魔法で暗くする、とか?さすがにそんな単純じゃないか。」

 

 ふわっと思ったことを言ってみたら、試してますかとりあえず。ということとなり、闇魔法を使うことができるのはこの中ではアオくんであり、【暗幕】をおろす魔法を発動してもらう。

 そうすると『カチッ』って音がし、石造りの中ボスフロアが夜空に覆われた。

「まだこれ、ギミックありますね」

「足りないか~」

 こうなると、よくあるのがあれだ。水。足場となっている石段をよく見ると、やっぱり水のあった跡がある。この中で水魔法が使えるのは、志摩。いてくれてよかった。


「水、貯めたらいいんですね。わかりました。」

 志摩は部屋の端の方にに魔力で水を作り出し、ザーッと滝のように、流し込んでいく。ただ、ちょっと1メートルぐらいの貯水が必要でまあまあ時間がかかりそう。

「これであってたらいいけど、ダメだったら完全に引き返してやり直しだよね。」

「今までの4ギミッククリアしたうえで、この部屋のギミックを起動するための人員を確保するのも結構大変ですよね。今回志摩さんがいてくれたからよかったですけど、水をこの量貯めれる魔法使いって簡単には見つからないかと。師匠は得意不得意はあれど、問題なくこなしそうですが。師匠は、不得意が普通の人の大得意レベルですからね。」

「スイッチおした!とか、何かを避けたら起動した!みたいな構造ではまったくないよねこのダンジョン」


 そんな話をしている間に水はどんどん溜まってきて、そろそろ、ラインに到達する。

「何か起こることを期待して、そろそろご準備ください!」


 というか言わないかと同時に、再びこんどは『ガコン』という音がして、虚空の天井から大きな檻が落ちてきて、床に落下。その落下した檻が大きく水を跳ね上げたうえで壊れ、封印のお札のようなものがはがれ、中から大きなゴーストが這い出る。

「冷た!あたった!バトルだ!」

「あ、これ『ネオ・トワイライトゴースト』ってかいてありますよ」

「ネオ!」


 とか言っているうちに、ういは体を時計回りに一回転させることにより、光の柱をゴーストにぶつける。そこで軽くひるんだことを確認したら、先ほど同様【巨大化】、2度、吠えることにより、先ほどもったいぶって登場したはずのゴーストは跡形残らず消滅していた。


「うい、強いね…」

「はや…」

 またもや何も、やることがなかった。

 帰ったら、アキレス腱のついた蝦夷鹿肉ジャーキーいっぱいあげようかな。

 

 今回は、巨大な薄暮色の魔石と、ゴロゴロと宝石のついた、宝剣[ラジカルトワイライトダガー★★★★★]がドロップした。


 なんか、うい、ドロップ運、よくない?


 そんなことを考えていたら、目の前に地下6階へのゲートが現れた。

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