第68話 アトル/南の国(4)
クエスト達成報酬で、ちょっとお金があったので、アトル産のフルーツや野菜、わりとモリモリに購入し、フリースペースに格納。
おそらくナットの位置とアトルの位置からいって、地球換算でだいたい時差が大体8時間かな。今こちらが午後3時なので、まだ寝てないはず。
「アオくんお願いがあるんだけど」
「なんでしょう」
「ちょっと兄さんに例の電話で通信してくれない?食材格納について伝えたくて」
いいですよ、といいながら例のガラケー仮で通話を試みる。魔石に魔力を流し込むことで通信が可能、しかもアオくんの魔力パターンにのみ反応するように作ったとか言っていたので私が連絡することは難しい。
『あ、アオか!何かあったか!敵襲か?!』
本当に兄はいちいち物騒かつ声がでかい。全部聞こえてくる。
「敵襲ではありません!
「あ、防疫はしてねっていっておいて。外来種にはなるだろうし。」
『オーケー!そういうの得意そうだからもう一匹の救国にやってもらうわ。で、そっちはどんな国だった?』
通信音声を拡散してみんなが聞こえるようにアオくんがしてくれたので、直接話す。
「まるでメキシコ!気分はミステリーハンター」
『了解、これはそっちっぽい国の食べ物ね。サンキュー!明日の朝食べるわ。今店持ってないから生活が健全すぎて涙出る。』
そう言うと、明日隣の国の料理ギルドいくからもう寝るというので、先ほどアトルの医療ギルドで聞いた話を兄につなぐ。
『ギルドは全部どりが基本ね。了解了解』
「アオくんも魔女さんもどうもギルドに明るくなかったっぽいから」
『私もギルドとは無縁だよ』
おっとりとした声でささやくように話す、やっぱりそうだろうとおもったよ魔法使い。
『そういえば、おまえ、私が料理してあげる~とか言ってたらしいじゃん。でも結局全然ナットに居つけてなくて不実行甚だしい感じになってるっぽいからお兄様が王と魔女とイオにもケータリングしておいたから感謝するように』
「あ…」
マジで忘れてた。兄さんマジ感謝。
そして、横からアオくんから冷ややかな眼を受けるかと思いきやそんなことはなく、通信を切ったあとに実は忘れてることは知っていたこと、自分が食べているものをイオくんに自慢していたことを聞いて、本当に、本当に、申し訳ない気持ちになった。
◆
一休みしたあと、ダウンロードしたマップをテーブルに投射し、これからのダンジョン攻略順と、私の冒険者ギルドのランクアップに必要な素材のすり合わせミーティングをする。正直私が一人前までいかないと、ナット復興への足掛かりすらつかめない状態となってしまう。
「一番難易度が低いのこの城下町を南に抜けて約2キロにあるこのダンジョンです。今のチーズ様にはちょっと物足りない可能性が高いですが、納品素材はそれなりに出ます。」
永長がそう教えてくれたので、近接武器も練習したいので、とりあえず最初に潜るのはそこにしよう、という話になる。そこは『道化の窟』と呼ばれています、と志摩。
「ダンジョン内だと多分、刃物系の武器だと短刀が一番使いやすいと思うんだよね。ただ、代用で片刃ナイフぐらいがあると使えるかもしれない。今の視力があれば投擲も可能かもしれないし。」
「投擲は肩の強さが必要になりますね。チーズ様のレベルによる身体強化がどの程度かはまだ計りかねますが、『道化の窟』ではダメージが通ると思いますね」
なにより、『道化の窟』は志摩と永長2人でボスまで攻略可能であり、階層として5階層、ポップアップはランダム。他の冒険者様と争いにならない程度に狩りをしていれば大体問題ないと思われます。また、ボスはパーティー毎に攻略可能となっています。だそうだ。
また、『道化の窟』は入る際、1パーティーに1つ『出口戻りの魔石【道化の窟】』が支給される。
アトルの中でも最も低ランクなダンジョンであり、過去このダンジョンを攻略した者が不要となったその魔石を、後進のために冒険者ギルドに寄付。よってギルドで大量に魔石の在庫をもっているから支給してもらえる、とのこと。
『出口戻りの魔石』は文字通り、自分の意思で戻りたい場合と、戦闘続行不能になった場合において発動、出入口にあるゲートに送還される、ダンジョン攻略における必須アイテムとなっている。
「実は私たちが拾ったその石が家にまだ何個もあるので、明日行くとき持っていきましょう」
「えー…護衛の僕がいれば全くそんな出口戻りの石とかはいらないとおもいますけど~」
「万が一がないことはない、ってことですよ。念のためです。」
アオくんが言いくるめられている。
では、明日まずチーズさんの武器を調達してから、【道化の窟】に向かいましょう。
という方針が立てられたため、私は夕食の準備に取り掛かることとした。
異国産なのに見慣れた食材を使って料理をつくりたいのだが、食材の味が同じかどうかわからないため、味見しながらの料理作りである。
何を食べてもらおうかな。
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