第76話 アトル/道化の窟(7)
「はじめまして、私はアトルの冒険者ギルド長のベロニカと言います。」
カチッと制服をを着込んだ目鼻立ちのくっきりしたすこし癖毛がかった黒い髪の毛きっちりまとめた褐色の肌の女性が応接室に入ってきて、挨拶をしてくれた。
「はじめまして、チーズと申します。」
「アオといいます。」
立ち上がり挨拶をし、促され着席する。
「何点かお伺いしたいことがあるのですが、まず、【実績解除】がでたのはどこで何をしたからでしょうか」
圧迫面接かな?ちょっと怖めの物言い。
「道化の窟の最下層で、ガイドブックを見ると『サキガケトカゲ』と『ストライプフロッグ』が出現すると書いてあったのですが、私が入ったボスフロアでは、『ポイズンリザード(変異種)』と『オイルフロッグ(変異種)』が出現し、フォローしてくれる仲間の支援により倒したことによりこの表示が出ました」
ベロニカさんは目を見開き口をふさぎつつ、出現したモンスターの名前を小声でつぶやく。この人、怖いんじゃなくてトラブルに焦っていただけ?
「そのレベルの敵がでてしまったら適性狩りレベルの冒険者ならひとたまりもないというのに、無事でなによりだった」
「今回は私のレベルアップを目的として潜行していたので、同行者3人が高レベルであったがために今回この表示が出たのは私だけですが、重ね重ねも私の協力者もとい教官が優秀なおかげなのです」
「どのダンジョンも同種上位のモンスターの変異種がボスフロアで出るという話はあるのだが、まず確率が低すぎること、特に低レベルダンジョンであればあるほどアナライズをするまでもなく一撃敗走の可能性が高いうえに再度挑戦した場合に通常ボスとなっているがために、道化の窟でのボス情報が現状皆無であったがためにガイドに載せることもできず、半端な状態であり申し訳なかったとおもう。ボスフロアで変異種が出るという情報もなかなか人の話を聞く人が少ないせいか、怖がらせて伝わりづらくなって過疎化するのも問題と考えて、伝えることができていなかった」
「確かに、カエルとトカゲが出る、とだけわかっていた場合、間違いなくカエルとトカゲではあるわけですしね」
冒険者ギルドでも「話を聞かない人」には苦慮しているみたいだけれども、なんというか不器用というかへたくそだ。前に医療ギルドできいた、「たどり着いた土地のギルドは全部行け」も、「関係ないからとらない」といった思考の人にあわせて特段アナウンスしていないとか、申請しないともらえない補助金みたいだ。もうちょっと、なんとかならないものだろうか。
「曖昧な情報を与えるとクレームを入れてくる層に配慮してしまった結果が今とはいえ、これからは出現変異種が特定できたので注意喚起アナウンスができる、感謝する。」
そういわれると、悪い気がしないというかたまたま私が引き当てて良かったというか。過剰戦力だったし。
「話は戻るが、【実績解除】について説明させてもらうのだけれど、冒険者ギルドのランク設定には一つ一つクエストをクリアし、ランクアップする基本的なコースと、条件付モンスターを倒すことによりランクアップする裏ルート【実績解除】がある。みなまで言わなくてもわかるかもしれないが、『ポイズンリザード(変異種)』および『オイルフロッグ(変異種)』はその【実績解除】該当モンスターであり、解除ランクはCランクとなっています。特殊ルートであり無理な狩りを防ぐため、該当した冒険者のみへの告知となることをご承知おき願いたい。」
ここにアオくんを立ち会わせていいのか?ギルドに加入していないけど年齢が達した時点で一気実績解除しそうだからいいのか?いいのか。
【実績解除】によるランクアップの手続きを人目のある場所で行うと目立ってしまうので別室送りになることをあわせてきいた。
あまりいるものではないとは思うけど、Cランクぐらいならまあまあありそう…とも…
また、ここから先のBランク、Aランク、Sランクは小さいクエストを受注してランクアップをはかるものではなくなり、討伐モンスターにより戦績が積み重なり、【実績解除】のみでのランクアップとなる、とのこと。このことは秘匿事項となっているため、Bランク以上の場合は別室召喚になるということなので、この先ずっとそうなるのだろう。
冒険者の分布としては現段階でいうと、Cランク以下が83%、Bランクが10%、Aランクが5%、Sランクが2%と言われている。Bランクでさえ希少な存在となっているという。
ベロニカさんが手際よくランクアップの手続きをしてくれたおかげで、Eランク改めCランクにアップすることができた!これで念願のスキルレベルアップがたくさんとれてしまう!
あとで吟味してレベルアップしよう。
このランク依存のレベルアップについて、低ランクで高レベルスキルを取得しすぎるとMP不足となったり、無鉄砲な狩りを行い危険が及ぶ可能性が高くなるため、ランキング・スキルシステムが構築された段階で設定されたという。生来備えたスキルがレアスキルの場合、その希少さゆえにレベルアップができるランクまで上げることができずに冒険者の道、将来の進路を閉ざしてしまう場合もまあまああるとか。そこを食い物にする犯罪も一部ではあったようだけれど、取り締まりを強化した結果今は殆どないとのこと。
ひととおりざっと説明を受け、ステータスボードに新しい取説をダウンロードして用務完了。冒険者ギルドを後にし、一度拠点にもどることにした。
「ねえ、魔女さんと魔法使いさんって、ランク換算するとやっぱりSなのかなあ」
「いえ、あの人たちはSランクというか、SSRじゃないですか」
「SSRか~ってそれ、ランクじゃなくてレア度じゃない!」
「まあ、トリプルエスかそのぐらいの強さと稀少度ってことですよ」
そういえばドロップ物について何も聞かれなかったけど、まあ、いいか。
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