第109話 ナット/食糧難からの脱出(5)
種芋を畝にあわせて一列に並べ、一気に土の中へダイブさせる。イオくんが。
同じように人参も行う。
そしてちょうどいい感じに水魔法でしっかり水をやり、私の出番がくる。種が撒かれたこの区画を、【時魔法】で速度を上げ、一気に育成を行う。途中水が足りないときはまた丁度良くイオくんがうまくなんか魔法を使って水をやったり草をとったりと、ほぼ孤軍奮闘。私は生育時間を速めているだけ。
最終的に、つつがなく収穫までオートメーションで完了した。一部人参は種まで作成、種芋ももうちょっと広範囲に埋めれる分を作成し、1クール目が完了した。
やっていることが、なんかもう。完全に[畑のマエストロ]だよイオくん。
結果、集中力を非常に要したけれど、3時間で収穫までもってきた。完全に恐ろしい子だった。
「そんなに難しい技術ではないんですよ。結構オートメーション化していますし」
工程をフラグ管理して、その規定フラグ外をエラーとし、エラーを排除する形でプログラムを走らせる。
具体的に言うと、水が足りなければ補給、水が多ければ水を止め、草が生えれば引っこ抜き、害虫が付けば排除し、病気になれば治療する。
普通に難しい工程でしょこれは。
「僕には無理だな!こんな細かいことやってたらイ~~~~ってする、ほんと。だからほんと、僕がレベル上げを担ってこまいかいことをイオにまかせているのは理にかなってるとおもうんだよね。こないだの世界規模探索魔法は楽しかったけど。」
「レベル上げって、別にオレ、戦えないわけじゃないけど」
「適性の問題のこといってるの!適性の!」
「だからといって最初見学するとか言ってたくせに、この3時間お前ずっと犬と遊んでただろ!」
実にアオくんは最初30分で見学に飽き、【無限フリースペース】内ハウスからういを引っ張り出し、抱っこしたり、走らせたり、ダンスしたり、寝たりと、ずっと、遊んでた。ういのストレス解消にはとってもありがたいけど、本当に、遊んでいた。
「かわいいちゃんだから仕方ないよね~ういうい」
ういは撫でられまくっているし、ういもめちゃくちゃアオくんの顔を舐めている。窒息しそうなほどに舐めている。飼い主の立場たるやどこに。
「そうじゃぞ~余裕をもっていこう、イオも」
そんなこと言っている魔女さんは、先日アオくんとイオくんが探索魔法を行使した畑の真ん中の休憩所でどこから出したのかわからないリクライニングチェアに寝そべり、アトル産トロピカルジュースを飲んでいる。
その後畑を休ませ、第二次実験白い玉ねぎと紫色の玉ねぎの作成をし、また同様に収穫。この先1か月ぐらいの炭水化物は収穫できたところだ。
こうなってくると、キャベツとか白菜とかほうれん草、要するに葉物が欲しくなる。今育てた分はすべてこの国の貯蔵していた種だから問題はない。ただ、ちょっと考えてみよう。この世界にある他国の食べ物のみで育苗してしまうと、特産物の盗難的な扱いを受ける可能性があるのではないだろうか。
輸入したものを育成するとか、国際問題になってしまうきがしてきた。当初の考えが甘かった。盗みと思われず、産業として定着させていくのであれば、兄のように日本の食材育苗するのが正解じゃないのこれは。
「……魔女さん、相談なんですが、私の家の家庭菜園の野菜たち、この国の産業として育てても問題ないでしょうか」
「別に構わぬよ、複写してもってきたものはどうしようとチーズの自由じゃよ」
家庭菜園用の種、わけてもらった種、脱穀もしていない米と麦、結構倉庫にあったはずだけど。
◇
今日の畑づくりが終わった時点で、アオくん、魔女さん、イオくんと一緒に自宅へ帰還。 鶏ちゃんたちのお世話をしたあと倉庫へ直行。
今どんな種があったか、確認をすることにする。
そして種ラックを見ると、明らかにおかしい。
「……魔女さん、これ、なんか、変。あった覚えのない種まである」
お店にあるような種ラックがなぜか昔から家にあり、そこに買ってきた種を並べ、適当な時期がきたら植えているのがいつものルーティンだ。その横に粉ひき前の小麦と、精米前の米もおいてはある。
「ん~確かに妙だな。魔力の流れがあるのもおかしい。転写したら普通切れるはずなのじゃが…」
この世界に転写されたからこの倉庫に出入りしたのは数回だ。草刈り機とかそういう小さな農機とか、ロープとか、ビニルハウスの材料とかそういうものが割と適当に保管されている場所になっている。
「ちょっと確認してみるな」
そう言うと魔女さんは、 緑色の装飾の多くついた魔石を魔力を帯びた一帯、大体奥行50×横10×高さ150センチの範囲に設置、そして、手をたたく。
6回ほど手をたたいたところで、種ラックの映像が6つ、中空に浮かび上がる。
「1つ目から1日前、3日前、5日前、7日前、10日前、14日前じゃ。しっかり変化があるのう」
具体的に言うと、種が増えたり減ったりしている。
「これはほぼ確実に、定期的にチーズの元居た世界と同期されているきがするな」
そういうと魔女さんは両手を広げ、その、魔力の流れがある範囲に集中して調べだした。
「転写後に微妙な魔力の漏れは感じてはいたのじゃが、範囲が小さすぎて特定には至っていなかったのじゃが、チーズ、特定に至ったありがとな。」
「これ、このままにしておくことは可能ですか?」
「可能じゃが…ああ!そうじゃな!可能可能。」
魔女さんはすぐに理解してくれた。…これは、私によって都合がよすぎるのはわかっているが、向こうが種置き場を変更しない限り、この継続転写はラッキーすぎるので、止めてもらっては困る。 そもそも私が知りうる限り一度も場所が変わっていた記憶がないので、最高の輸入先ではなかろうか。
「詳細は追ってないからまだわからないが、向こうからの同期転写は7日に一度程度のようじゃ。」
しかも、元居た世界からの一方的な転写がなされるものであり、こちらがどれだけ使おうとあちらに再転写されていくことはない、とのこと。
大本の話、兄とういと私も転写輸入品だし、問題ない、ということにしよう。
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