第45話 急帰/いそぎかへる(2)
ファットバイクめっちゃ早い。
1キロぐらい走ったところで、アオくんが運転したいというので、交代。アオくんが運転するときは、フルオートはさすがに気が引けるので電動アシストモードにした。そもそも異世界だから気にしなくて良いかもしれないけど、どうも、気になるので。
そして、無尽蔵に体力のある少年の漕ぐ自転車のスピードといったら、凶器。
足元に居る何かはもう、ごめんなさいだった。
立ちこぎをしないで強烈なスピードをたたき出していく。電動アシストいらないんじゃないのこれ。
流れ出る汗すらきにしないほどに、アオくんはもう、生き生きしていた。
「チーズさんがきてからほんとに毎日が楽しいです!なんですか!魔法の世界に異世界の便利道具持ち込んできてもらったことがこんなに楽しいなんて!」
「集中してこぎな~このスピードで転んだら大変だよ~」
「了解ですっ」
もう目と鼻と先にナットの座標が来ている。
「後も一息、駆け抜けるよ~」
「はいっ」
そしてここまでの道筋、相変わらず銃またはそれに類するもののドロップはない。くそう。
そして、ナット王国の座標、外からみたら何もない空間に、差し掛かり、突き抜けた。
◇
空気が、私が最初転写されてきたものとおなじ匂いになった。
「ナット王国だー!ただいま!」
「このまま王城まで突っ走りますね」
「ラジャー!」
私の家がそのままある、この国のホーム感よ。時間止まってるけど。
電動アシストじゃなくてもいいから自転車つくったら結構な産業になりそうな予感。私に技術がそもそもないが。そして、城壁まで到着したところで自転車をしまい、ういを出し、抱っこをして石階段を登る。
魔女さんとイオくんモヤ王は、前にも居たことがある、何の飾り気もない部屋で待っていてくれた。
「おかえりなさい、災難だったね」
「確か最近のドラゴンの厄災は100年ぐらい前に南方であったと聞いた覚えがあります」
イオくんが、そういうと麦茶っぽいものを出してくれた。
何だろう?麦茶なんだろうか。そう思い一口飲んでみると、まごうことなき麦茶だった。美味しい。
もう、砂利道突っ走ってきたからシャワー浴びたい。
「それはそうとアオ!護衛といいながら無茶苦茶楽しんでてうらやましいが過ぎる!成敗!」
軽く殴りかかったようにみえて、双子がじゃれだした。
「あとでオレもカレー食べてみたいし、ボードに乗ってみたいし、自転車にも乗ってみたい!」
「僕に言っても僕のものじゃないし!チーズさんに直接聞けよ!」
「そこは言ってくれるのが兄ちゃんなんじゃじゃないの~?」
アオくんが兄、イオくんが弟ね。そんな気がしてた。
まあ、直接言わないで近くにいるから言ってることを聞いていてくれてる、だから自分たちの都合のいい声を私がかけてくれると思って好きなこと言ってるんだろうけど、お姉さんは厳しいのでちゃんと頼んでくるまでこっちから作ってあげるとか貸してあげるとかは言いません。
早く言ってきたらいいのに。
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