第23話 ネルドへようこそ/城下町とギルド(2)

 ギルド登録所は城に程近いため、マップを見ながら向かうことにする。

 

 なお、アオくんもイオくんも成人はしていないので、登録はしていないとのこと。 

 魔女さんはそもそもがそういう規格の範囲外とみなされ、登録は不要という扱いであり、していないということを教えてもらった。


 ほかにも商売や研究を全くしない、王侯貴族も必要がなければ登録していないとのこと。要するに民衆が効率よく稼ぎ、生活していけるシステムと思われる。


 そして、ステータスまで全部筒抜けになるわけではないので、素養による強要も発生しないとは割とよくできたシステムだ。


「チーズさん、[鑑定]レベル3まであげられますか?」

「そのぐらいのスキルポイントはあるから今あげるね」

 そういうとステータス画面を展開し、スキルポイントを割り振りする。

 レベル3になると[広範囲表示]視界に入る範囲が一括鑑定できるようになり、「原産国表示」に特化し表示てほしいと言われ、そのように設定周りを見渡す。

 

 [原産国]■■■


 周りを見渡す限り、原産国■■■

 私たちはあそこが今「ナット王国」ということを知っている。ただ、輸出され、この国にあり続けた物資や建材、調度品は原産国が名を失っているんだ。


 それにしたって割合がおかしい。ネルド産はほぼ食べ物ばかりだ。


「見えました?この国はもともとナットが技術援助をして発展させた国なのでほぼほぼ建材やインフラはナット産なんです。その後ナットの地下資源が尽き、国として傾いていくときに協力するわけではなく、ネルド側はナットのものを安価で買いたたいて入手し食い物にしていった結果がこの有様です。ナットの人間はそもそも商才はあまりないのと、傾く国を切り売りした政治家がいたせいで瞬く間に没落したので、まあ、当然の結果ではあるんですが。」


 これは、実際に見てきた魔女さまの受け売りです。要するに、恩を仇で返されたというか、結論搾取されていたってことなのだろうか。ナット王国は絞っても何も出ないところまで困窮して凍結に至ったわけなので、一番近いこの国に余波がないとはおもえない。


「……とりあえずまずは、ギルド加入登録だよね。」

 広範囲表示を続けたままギルド登録所まで向かう。本当に、ナットのものばかりだ。街の賑わい的には地方都市程度、王国というわりには多すぎず、でも、物珍しくみられることもないので結構ちょうどいい。


 城の入り口から10分程度歩いた先、城下町が一望できるところにある、ギルド登録所に到着した。


 そこの受付には男女一人ずつならび、軍服のような制服を着ている。ちなみに戴帽たいぼうはしていない。そして、制服の肩のエポレットの色で所属担当のギルドがわかるようになっているようで、受付所の制服のエポレットは若草色だ。


「こんにちは、ご登録ですか?」


 後方からクリップボードを持った案内担当の女性に話しかけられ、ちょっとびっくりする。


「はい、登録希望です。どのようにしたら良いか教えてください。」

「では、こちらへどうぞ」


 促されるのは役所によくある記載台。4月の住民票の変更は数時間町とかになるあの手続きを思い出す。

「この用紙が申請書になります。名前を書いたらあちらにある受付にお持ちください」

 そう言うと案内嬢は所定の位置に戻っていく。

 アオくん曰くはチーズと普通によく知る自分の国の文字で書いて大丈夫、どの言語で文字を書いても、すべて翻訳してみることができるようにシステムが組まれている、とのこと。


 この転写後の世界に存在しない日本語にも対応ってすごいね。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る