第7話 異世界の君、最初の晩餐(1)
当初呼び出されたら集合、との話だったけど思い立ったが吉日。
食事の準備をしていたら困るので、アオくんから”凍結の魔女”さんあてに今後この世界で生活していくにあたり必要不可欠な魔法の基礎を教えてもらうことからも、一度ご飯をふるまいたいという連絡を入れてもらい、了解を得たので早速準備にとりかかる。
とりあえず王様と(食べれるのか謎だけど)、 魔女と双子と私の分だから、いつもとおなじぐらいの量を作れば良いか。
すでにある冷凍食材と、野菜を刻むだけっていうだけなので料理といえるかどうかはわからないけど、LPガスのガスボンベも何本か備蓄があるからジンギスカンでもしようかな。
そう思い、カボチャともやしと玉ねぎ、キャベツ人参ピーマンを刻む。続いて、土鍋でごはんを炊き、蒸らしておく。
その間、犬にとって有毒な玉ねぎを扱うためにアオくんには別室でういと遊んでいてもらう。獣医というあてがない世界にきてしまっている手前、リスクは極力避けるようにしなくては、と思う。
あらかた準備が終わったので、さっきアオくんに教えてもらった【倉庫】にアクセスを試みた結果、私に割り与えられた【倉庫】かそれに準じるものは、【無限フリースペース】というアイテムボックスとも言い難いものであった。整理整頓可能な四次元倉庫。しかも、頭で考えるだけでアクセス可能という優れもの。
検証してみた結果、自分自身は入ることができないが、倉庫に使ったり、保管に使ったり、シェルターに使ったり。その他目的にあわせて自由使うことができ、容量は無制限かつ、時間干渉スキルの影響か、区分けによって時間経過を設定可能。時を巻き戻すこと、進みを早くすることはできないが、時間停止・ゆっくり・通常と3パターンの設定が可能、かつ温度設定も可能であることがわかる。
最初なのでイメージ的にはキッチンにあるような棚をとりあえず設置、とりあえず切ったものを突っ込んでおける場所を自分のイマジネーションで作成した。設定としては鮮度が落ちたら残念なので時間停止だ。
その設置した棚に準備した野菜とごはんが炊き上がった土鍋を収納。その後ジンギスカン鍋とコンロとガスを、そして冷凍庫から味付けジンギスカンを取り出しこれは時間が経過する棚に保管する。冷蔵解凍したいところだけれど、まあ、そんなに時間がかかるわけではないので今回は常温解凍でいいか、と思う。
収納自体は、私の手が触れた、または持った状態で倉庫内を思い浮かべ収納をイメージするだけですきっと収納、手元には残らない。引き出すときはその逆だ。
異世界転写のアベレージかもしれないが、引くレベルに便利な【無限フリースペース】をもらってしまった。
「アオくんとうい、準備できたからお城に向かうよ~」
正直食事を振舞うのはうちの庭でもよかったんだけど、結界があってみんな入れないみたいだし、お城をあけても不用心だよね。そもそも王は離れられるのかもわからないし。
お城への転移はアオくんにまかせてある。実際はアオくんが持つ魔道具を通じて魔女さんが転移を行っているみたいなんだけど。
「師匠から門まで移動してとの指示がありましたので行きましょう。そしてチーズさんが準備している間に、ういが僕に少しなついてくれた気がします」
気づけばういは全力でしっぽをふり、アオくんの顔をべろっべろに舐めている。
ういにとっては新しい遊び相手ができたのか、子分ができたと思ってはしゃいでいるのかはわからないけれど。
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