第66話 アトル/南の国(2)
医療ギルドに入ると、そこには猫が何匹もいた。
医療に猫?!とびっくりしたけれど、そういえばういも神聖魔法属性のエクソシスト犬だった。ただいるだけなのか、何か理由があってのことなのか。
ネルドでは私に医療は無縁と思って立ち入ることすらしなかったため、あちらがどうだったかは、わからない。因みにアオくんにきいてみても入ったことがなく、魔女さんはそもそもギルドに寄り付かないため、他の国がどうであるかは全くわからない、と言っていた。
とりあえず最初に受付に顔を出し登録申請と静脈認証を行い、医療ギルドに属してみる。
手続きが終わったあと、あまりにも猫を凝視しすぎていたためか、職員さんから声をかけられた。
エポレットカラーはネルド同様水色。褐色の肌を持つ、黒髪を肩上で切りそろえた女性の職員さんだ。
「医療ギルドは初めてなのですね。受付に猫がいることに疑問をおもちになりましたか。医療ギルド1か所に1人はビーストテイマー職の職員がいまして、その職員と使い魔契約をしている猫たちです。主に(職員の)癒し担当ですが、実際に癒しの力を持つ猫もいます。また、テイマーの力により猫アレルギーにも配慮、アレル物質の付着・飛散はおこらないようになっていますので、万が一アレルギーをお持ちでもご安心を」
猫が撫でれる良い職場だった。
「もしかして、動物関連医療も医療ギルドの管轄だったりしますか?!」
「動物関連医療ですか?怪我とかでしたら人間と同じプロセスでどうにかなりますし、何か問題がおきても高ランクの魔法やアイテムさえあれば寿命までは元気で生きられますし、また、主従の契約内容などにより、寿命を延ばしたり全盛期を保ったり、といったものでしたら、問題ないかと」
残念ながら、一緒に生活するに特化した認識であった。繁殖介助や予防医療の範囲は明るくないらしい。そういえば人間の予防医療みたいなものもあるのだろうか。そもそも必要なのか、加護でなんとかなりまーすなのか!この世界をもう少し知っていくことが必要そうだ。
「医療ギルドは癒しの力を持つもの、薬の調合を得意とするものが所属するギルドであり、特にギルド内で設定したランクはありません。ギルドのランク管理というよりは、魔法やスキルのレベル管理で成り立っています。医療ギルドに依頼がはいった時にギルド所属者に一斉通知が入り、その通知に応えられそうな場合のみ招集に応じるといった流動的な集まりです。そして、その応じてくれた内容により報酬が払われ、回数・難易度によっては褒章を送られることがあります」
まるで献血か
別に「回復魔法しかもってないし」で加入できないギルドではなかった。
そして、ワクチンとかは、自分で開発したりどうにかしていくしかないのか…?フィラリアの薬とダニ予防の薬、今年の分まだないんだけど…
「動物医療はよくわかりませんが、ビーストテイマー職は世界で1か国のみがギルドとして建物を有し、他はすべて受付所の代行業務で行われています。■■■という国を訪れることがあればギルド実績開放に行ってみるといいでしょう。」
相変わらず行ったことがない国の名前は聞き取れない。
「ねえ、アオくん?ギルドってみかけたらとりあえず全部登録しておくことが正解だったりするのかな」
「低ランクで招集されることはほぼなさそうですよね。僕たちは本当にギルドというものと無縁で生活してきたので、情報をほぼ持っていなかったことが自覚できました」
そういえば兄さんは冒険者ギルドと料理ギルドに登録しに行くとかいってたような。
「その国にしかないギルドがあったり、そのギルド拠点に対し転移もレベルがあがれば可能となったりもするので、チェックポイントかスタンプラリーぐらいにおもってじゃんじゃん登録したらよいと思いますよ~これは私の考えですが。みなさん適性とかやりたいものに限って登録しがちなんですが、高ランク冒険者は大体全部に加入していますよ。」
あと、参考までにですが、『料理ギルド』と大きなくくりで言っていますがその中に「お茶・コーヒー・紅茶等の嗜好品」「美食家」「酒」「お菓子」といった部分も包括されていますので、料理作るのは苦手でも食べるのが好きな方も「料理ギルド」に加入していると、有益な情報等受けることができます、だそうだ。
「そういうことは、ギルド受付所とか、ギルド初心者に教えてほしいことなんですけど…知らずにいる人も結構いそうなきが」
「最初は教えていたんですけど、割と解説に解説を重ねると全部忘れる人が多かったので、やめたんですよ。自主性を損なうのもよろしくないのでマニュアルにとりあえず全部行ってとも書けないんですよ。知るべき情報が多すぎることも問題ですよね~」
親がちゃんと取っているとか、師匠がちゃんと取っているという人ではないと、自分のやりたいものとか、適正のありそうなものに特化して取ってしまって、芽を摘んでしまうんですよね~実際ギルドは生活のために取ってるひとが殆どで、実際世界をまたにかけて冒険される方は全体の1割にも満たないんですけど。
あ!お話しすぎました!お時間大丈夫ですか!?
と聞かれたけれど、むしろ、私もアオくんも、大変勉強になりました、と返すしかなかった。
「医療ギルドって困ったという陳情の受付と、適性者への情報発信ばかりしているので、あまり、普通の冒険者さんが来なくて…」
と遠い目をしている。
確かにね…。
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