第223話 密室ノ会・祈(16)
もしかして、僕が棒立ちしてたのがまずかったのかもしれない。
王の不興を買ってたらどうしよう。
良く知るナット王がモヤだし骨だし呪われてるけど優しいから、そして、最強の後ろ盾である師匠と共にいたから、僕1人だと何者でもないのに認識がぼやっとしててしくじった。これはダイナミック土下座で平伏するべきか?!
こういう時は勢いと度胸だ!そう思い床に向けてダイブしようとしたところで、コウコさんに体をはって止められた。というか激突した。思い切り鼻を撃ちつけた。痛い。
「まて碧生。この図書館ではそういうことはやめろ。王とてそれを望まない、なあ?」
「そうなあ。フフ」
ちょっと観察していて思ったけど、この人たち通じ合いすぎなオーラが出ている。親友だけど従者、身分違いだけど実は仲良しとしか思えない。まるでナット王とシンさんじゃないか。
こうなったら、まずちゃんと挨拶するところから、か。
「名乗らぬ無礼、大変失礼いたしました。私の名前は
「碧生、私とか言えるんだ」
なんだかまたコウコさんのツボにはまったらしく激しく笑われている。もうほんとに笑いごとじゃないって。どんどんいたたまれなくなりうつむいていくと、王から言葉を戴くことになってしまった。
「コウコはな、こう、無礼な奴なんだよ。仕事はものすごく出来るがな。そして碧生少年、ここの図書館で学びはあったか?」
「はい、数日ですが、たくさん学ばせていただいています」
そこにさっきから泣き笑いを続けていながらしっかり口をはさんできた。
「碧生はね、読書センス抜群、選書センス抜群。母がシラタマ出身という面白少年だよ。出会って1週間だが、こんな私に付き合ってくれてる物好きだ。人生修羅場か変人か。ぶっちゃけこの子があのミルクスタンドの連中の連れだってことだけは知っているが、詳しくは知らないし、知る気もない。正直、この子はこの先の人生でもなかなか出会えない面白人材だよ」
ミルクスタンドの連中?!そんな風に認識されているんだ。まあ、あの二人、悪目立ちしていることは否めない。力も、見た目も。
「そう言えばアイツらに最近会ってないな、……そうだ!お前が帰るときついていくかな。牛乳とやらを飲んでみたいしな」
「王、多分その時間なら完売になってしまいます。ご賞味いただけるのであれば、お出しできますが……図書館で飲食は避けた方がいいですよね……」
提案してみつつも、ここがどんな場所かを言いながら思い出した結果、言葉尻が小さくなった。
チーズさんの【無限フリースペース】内の、僕の取り出し可能な権限が付与されている時間停止倉庫に、チーズさんのものとは別に、
王の口にあうかはわからないけれど、あまり図書館で飲食するものではないのはわかってる。いや、
「え?!なぜおまえはどうやってかあの男の作ったものを持っているのか?!……あいつらは普通じゃないからのう。お前もあいつらの一派だから何かしらの企業秘密があって然りか。そして時間停止ができるアイテムボックス持ちということだな。で、あるのか?牛乳と菓子は」
「持っています」
無いとかそういうしょうもない嘘はつかない方がいい。そう言うと王は目を輝かせ、コウコさんをターゲットにする。
「よし、お前の部屋にいって食べよう!おやつ休憩だな!」
「王、申し訳ないですが、業務時間中です。しかもあなたは一人でこんなところにぶらぶらきてしまっている。ちゃんと側近に言って来たんですか?」
「ちゃんと図書館に行く、暫く戻らぬ、とはいってきたぞ。本の変異があったとなると…いや、この先はコウコの部屋に行こう」
「ほんとに、どうしても来るんですか?私の部屋」
「お前の部屋といってもカウンターの裏だろ。住み込みなんじゃ、問題ないではないか」
王が完全に引き下がらない、これはもうコウコさんも折れるしかないだろう。
◇
「ははは。相変わらずの部屋だ」
王はコウコさんの部屋に入るなり、言い放つ。
「お邪魔しまーす」
そう言い僕も入ると、目の前には図書館の地続きかと思うぐらいの大量な本の山。本棚からあふれた本は床に無造作に積んであり、大量のしおりがさしてあることが見える。パット見た感じ、物語系の小説が多そう。本と本の間には、洗濯したあと畳むのがめんどくさかったんだろうな、っていう大量の服が山をなしている。正直下着がその山の中に見当たらなくて良かった。さらに、ファミリーサイズの炬燵。そこを囲むは大量の大小混在のぬいぐるみ。
「コウコさん、この本たちは、読み途中なんですか?片付けがめんどくさかったんですか?」
つい、聞いてしまった。
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