第141話 シラタマ/都・MSホッカイドウ(6)
あっという間に兄が交渉をまとめたというか、情報を引き出して有利な条件が整った今。実際この国の食料採取基地を救っているから信用があるし、ここまで力があると、条件から寄ってくるんだよな~と漠然と見てしまう。
会議室から帰路に就く途中、兄が来ていると聞きつけた料理人ギルドの方々が寄って来て記録が~とかタイムが~とか言い出したので、天くんの耳をわたしとアオくんでふさいだ。ちょっとは気をつけろ!と言いたいけどいまの天くん、竜種っぽいところがまったくない変身をしているがために、気にされないのもわかる。
そして、王城所属の料理人ギルドの方に誘われ、料理人ギルドが王城内で運営しているお茶屋に向かう。企業併設のカフェみたいなもので、日本茶、抹茶、お茶菓子、お団子などが提供されている。
店舗の前に大きな朱色の野点傘。本当に、ここは昔の日本みたいだ。
兄とついでに魔法使いさんは料理人ギルドの人に拉致られ、ドラゴンを捌きのタイムアタックの話をされていてほんと勘弁してほしいので、ちょっと遠めの席を陣取り、お茶とぼたもちをもらう。
そして思うに、この国にはまだ、ラテ文化がないっぽい。そもそも牛乳自体が普及しているものでもないからか。というわけでお茶屋の店員さんに来てもらって、抹茶ラテ、ほうじ茶ラテの作り方を紙に絵で描き、あわせて兄の作った牛乳のうち私たちが飲むように避けといてくれていたものを一部お店に分けてもらって、作ってもらう。
本当は私が作りたいところだけど、この国の資格はもっていないので本当にお願いする。そして、通常であれば蹴られても仕方がないのだけれど、兄の信用によりすべてがまかり通ってしまう。
女性の店員さんが、私が描いたレシピに基づき、目の前で実演して作ってくれることになったため、みんなでカウンターに移動。細かい作り方については図示してあること以外にも細かく伝えつつ、出来上がる。
店員さんが飲む分と、私たちの飲む分だ。アオくんはまあ、大丈夫だとおもうけど天くんはまだ体は大きくなっているにはなっているけれど、生後そんなにたってないのでカフェイン耐性がよくわからいので、少量をもらうことにする。
「あわあわ~」
「そういえばこういうの、
「兄さんの店、回転と味に重きを置いてるから、あれだけ忙しいと回転下げるようなことできないんじゃない?なんかソフトクリームも提供できずじまいって言ってたし」
そして、私たちと店員さん4人で試飲会。
「あま!まろやかですね。こんな飲み方あるんですね。」
「ほうじ茶ラテはしっかり先に熱湯で出すことがコツです。抹茶はちゃんと最初にちゃんと練ること。
「お濃茶に糖を加えて牛乳で伸ばしているイメージですね」
「確かにそれが一番近い!」
そこに兄たちが話が終わったのか、こっちに来た。
「なにやってんだ~?ラテ講習会?」
「今のところ牛乳は兄さんところの専売流通みたいなかんじだから、ちょっと渡して試飲作ってもらったの。アオくんと天くんに味見してほしくて」
「確かに俺のところお茶の流通持ってないからな~。アーモンドミルクとかオーツミルクとか使えればいいんだろうけど、今そっち方面もまだ未開発だろ?」
「なんか、可能性無限大じゃない?」
「確かに」
「天くんアーモンドミルク好きそう。」
二人と店員さんは新しい味が頭の中で考えうる「お茶」と「謎」と「なんか美味しい気がする」のないまぜであったのか、不思議そうな顔をしつつ美味しく飲んでくれた。
「そして、兄さん、この後どうする?」
「主に天だろ?」
「そうそう。今兄さんと魔法使いさんについたら、ジェネレーションギャップがえぐいきがして…だって、1000歳代と20代後半…」
「アオが近くにいてくれるに越したことはないだろうけど、ママの意向がなあ。」
「しかも兄さん今暫く狩りより経営の安定を主においてるでしょ。休みの日ぐらいしかかまってあげられないんじゃないの?」
「そこなんだよ。多分、数日はいいと思うんだ。その後が怖い。」
「あー…」
こうなったら、本人の意向を聞いて見るか。
「ねえ、天くん。これから、天くんにそっくりなこの兄さんと、私とアオくん、どっちについていきたい?」
そこから少し考えている。
「みんないっしょはだめなんですか?」
「みんないろいろな所でやらなきゃいけないことがあるから、ずっと一緒は難しいんだ」
ここ数日が楽しかったのか、涙目になっていく。これは、ヤバイのでは。正直私はまだこの子の潜在能力を知らない。
「アオはどう思う?」
突然話を兄にふられ、眼を見開いてむせるアオくん。関係ないとか思ってたのかもしかして。
「天くん潜在能力はすごいんですけど、まだどう自分の力を使っていいかとか全然わかっていないので、ちゃんと指導してあげたほうがいいとおもいますよ。どんな適正があって何が得意とかちゃんと僕わかってないんですけど。」
「そっかそっか。吉祥の白竜の息子だもんなあ。」
「天くんみんなと一緒にいたいっていってるし、まあ正直兄さんの息子のような私の弟のような見た目だからもう家族として協力して育てる方向にする?」
「そこ、俺の弟じゃないの?」
「自分の歳考えて」
「えー…でもいま天の見た目10歳ぐらいだから許容範囲許容範囲」
この間、涙目の天くんをなだめて頭をなでてくれているのは救国の魔法使いさん。
完璧なフォロー感謝。
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