第304話 ボレイリョウ(23)
フレームインしてきた
『今まで聞いてるだけでごめんな。ちょっと仕込みが佳境で』
「ミルクスタンド、忙しいんですか?!」
『いや、今本店は臨時休業中。シラタマのサンショウっていう街あるだろ?』
「あぁ、船着き場逗留地の」
『あそこに支店出してそこで販売してる。収益維持できるぐらいは売れてるから、来週以降も販売できるように準備中』
温泉地に牛乳?どう考えても売れそう。しかし本店にいながら休業中、王があと5日は滞在している、という事から考えてこれは、王の食生活を
「え、いいなあ。
さっきの陶酔した顔から一転、悔しさのあふれた顔になっているチーズさん。僕にとってはチーズさんの作ってくれる料理がこのうえなく物珍しくここ何か月も毎日が楽しいんだけど、そのチーズさんがものすごく悔しがっている。
『そのうちな、そのうち。今週はシラタマ王の料理番、だな』
『ちなみに私が毒見してま~す』
「兄さんも魔法使いさんも毒効きそうにもないのに?!」
『まあ、ノリはなあ。俺は味覚が変調するから、毒無効はパッシブスキルとしては保持していなんだよ。飲酒による酩酊もある意味毒だからな、食べ物と酒をあわせたりした場合、一般的な味覚から外れてしまうと影響がな。それこそ山葵やトウガラシの辛味とかも大まかにいうと体に影響があるから、完全に無効としてしまうとこの職業柄、致命傷になるんだよ」
「じゃあ、王が食べるものと魔法使いさんが食べるもの、一緒でも感じる味が違う、と」
「そもそも味覚なんてひとそれぞれだけどさ、そこはちょうど同じように感じられるようにまじないをかけるのがプロってところよ」
これ、たぶん毒無効とかそれに準じるスキルを取って味覚が変わった調理人としての同業者、みたことあるんだろうな。一度取ったものを返上できるという話は聞いたことがないし、確かに取ったら終わり。ある意味恐ろしい。
「ところで
『そうか!ありがとな。これ王の前で言ったら台無しだけど、王侯貴族の前で調理するときは黒。理由は汚れが目立たないから』
『ほおお!そうなのか!それは知らなんだ。それで今日は何を作ってくれるのかのう?楽しみじゃ』
『王、楽しみじゃ、って久しぶりに仰ってますよね』
『そうかのう?こう、せっかく王として扱ってくれるんじゃ。こちらもそのようにしたほうが良いのかと思ってな』
『普通でいいです、普通で。じゃとかいっていたの、初対面の時だけでしょうに』
『どうだったかのう~??』
「シラタマ王、僕たちの師匠と同類だったんですね」
「師匠、チーズさんに言われてから語尾で無茶するのやめたよな」
「そう、それそれ」
『おい、そこの双子。そこまでにしとけよ~』
しかし自室に実質軟禁状態としか思えないコウコさんと相反してシラタマ王はものすごく、楽しんでるよなこの生活を。化粧も髪結いも着物もすべてラフ、しかもミルクスタンドにいる限り王宮にいるよりも最強の護衛と美食が提供されている状況。
これって、帰りたくなくなるやつでは?
というか
「ところで
『分けてくれる量で問題のない分、ぐらいで。量によっては調理のしようはいかようにでもあるし』
「じゃあ、私が個人的に自分の分としてたぶん分けてあげるね、わかるようにして【無限フリースペース】につっこんどくよ。報酬は
『助かる!慣れた食材と鑑定されるこの世界の食材は貴重だし、調理して試してみたい。じゃあちょっと仕込みに戻るから、あとはよろしく、王とノリ』
『もちろんですとも、我らの夕食頑張って作ってください』
『それはもちろん』
フレームアウトする
「どうした、天」
「ねえあおあお、思ったより早いけど、噴火終わりそう。そしてちょっとまずいかもしれない」
『さすが吉祥の、探知が早い。確かによくなさそうだね。話に割り込んで悪いけど、君たちはボレイリョウだっけ?ライムドラゴンと戦闘をした場所まで戻ったほうがいい。おそらくはオイスター王家への第二の厄災が始まる。そもそもの話第一の厄災について気が付いていなさそうだけどね』
珍しく真剣な顔をした救国の魔法使いの反応、本当に何が起こっていくんだ、この国で。
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