第63話 実家大改造中(2)

 突然土が落下したがために、大きな土ぼこりが舞って、体中土まみれになった。

 これ、鼻かんだら黒いやつ。


 「兄さんごめん!修行がやっぱり足りてない!ガス欠で落とした!」

 「いや、これだけ土があれば助かるよ!人間は風呂入ればいいだけだし」

 犬は?とおもってういをみたら、アオくんにかばわれて、アオくんもういもきれいなまんま。

 ドロドロなのは人間3人だけだった。

 

 ◆


 家に帰り順番にシャワーを浴び、リビングに集まり私が前に作ったアイスをみんなで食べる。

 「でさ、兄さんどれ系のファストフード店やりたいの」

 「バーガー屋か牛丼っぽい何か屋かサンドイッチ屋」

 俺の料理のバリエーションがあれば、割と何でもできる!寿司以外!だそうだ。ジャガイモは揚げてもいいし、ポテサラ作ってもいいし、どっちに転んでも使うだろ、だそうだ。

 「芋畑の原型もできたし、その厄災が起きてないほうの隣の国行って、料理人ギルドとかいうのに加入してくるわ!コイツがそこはグルメタウンだとかいってたから。あと冒険者ギルドも入っておかないと今後の採取に影響が出そうだからそれもだな。」

 この兄、明日にはS級になってるんじゃないんだろうか。

 「ちなみに私と■■は、ランク対象外だよ。システムが始まる前から生きてるうえに、基本好きなことしかやってないから、範囲外ともいう」

 二つ名だけ先走ってるようになっちゃってるけど実績もそこそこあるんだよ~だそうだ。普通の魔法使いに「救国」とかついたらそれはその方が問題だ。

 

 そこで兄が思い出したように、あ!そうだ!盟友アオに渡しておくものがあった!と、ガラケーみたいなものを取り出した。

 「さっき作ったんだけど、1つの通信魔石を2つに割って、増幅魔法をしかけ内臓したトランシーバーみたいなもの。チーズの冒険はチーズの冒険だから俺は基本手助けはしないし、アオが結構な護衛であることはわかってるけど、どうしても、というときこれで呼び出してもいいぞ~。こいつもいるし、何があってもなんとかなるだろ。あと、普通に通信機器として使えるからなにか近況報告とかチーズにこんな迷惑をかけられたとかなんでも言ってきていいぞ」

 「ありがとうございます!こんな魔道具初めて見ました」

 アオくんがとてもうれしそうな反面、私は何とも言えない気分になった。迷惑とは なんだ迷惑とは。

 

 ちょっとむっとしたついでに少しだけつつく。

「兄さん、魔法で土をガス欠まで出した私にはなんもないの」

「むしろ何かほしいの?」

「いや、別に、言ってみただけ」

「やっぱり」

 ニヤニヤしながら兄が続ける。

「昔っから人からもらうものに対する欲とかないもんな~俺たち。自分で手に入れるのが至高みたいな。」

「それそれ」


 そうなんだ。私たち兄妹は、自分の欲しいものに対して基本的に自力で手に入れる努力をする、どうしても手に入らなければあきらめる、という気質をもっていた。だから、親とはいえチーズ工房作ってくれたのは嬉しいやら申し訳ないやら、という気分になったことを思い出した。たぶん、転写された私は今後会うことは叶わないけど、両親とも無事に檀家旅行からそろそろ帰ってきてるかな。転写元の私も兄も元気にしてるかな。


「とはいえ!それとこれは別で!私にお礼とかあってもいいんじゃないの~無報酬が!いやなだけ!労働に対する対価は欲しいよ!」

「え、じゃあ、次行きたい国まで1回サービスで連れていってあげようか。コイツが。」

「私?!」

 突然魔法使いが指名され、狼狽していた。いや、でも魔女さんに頼んでるし、と断る。そういうのをちゃんとしとかないと信用をなくすからね。


「じゃあなんか無理やりするのもおかしいから、次までに何か考えとくわ。今後もおまえの時間干渉と合成にはお世話になりそうだし。」

「人のスキルあてにしすぎ!」

「俺のスキル体系にいまのところどっちもないんだよなあ、今後取得可能なのかだめなのか。この世界でレベルがあがって初めてこっちの世界のスキルが現れるかもしれないし、異物扱いされて何もおきないのか。何がおこるかちょっと楽しみでもある。」

「しょうがないなあ、とりあえず本当にいま思いつかないから、1つ貸しってことにしてもいい?」

「じゃあそれで」


 「それはそうと、この家大改造したんだよ。改造というか、勝手につないだだけなんだけど、お前のフリースペース倉庫をミアカ村で共用倉庫としてストレージの権限を開放して扉をつけただろう?ここで俺の権限がある範囲について立ち入れるように、冷蔵庫の横に扉つくったから。そのうちお前が魅了耐性を得たら、弁当ぐらいたまにおいておいてあげよう。」

 って兄よ。貴方は全域立ち入り可能なのでは。しかも、私は私のフリースペースから考えるだけで出し入れ可能であること、立ち入れないことを考えると私にとってはまったく関係ないのでは。


「基本お前の倉庫には俺はものを置くだけ。生乳以外を取り出すときはさっきアオに渡したそれで通信するから。ところでさっき気づいたんだけど、鑑定スキルって生乳検査もできるんだよ!さっき見てみたら細菌検査から体細胞検査までできてびっくりよ。工場がない分、スキルと魔法でどうにかして製品として加工していけるようにしなきゃだな!」


 そういわれて、一部を取り出し私の「鑑定レベル3」でみたところ、「生乳、無毒」としかでなかった。どんなレベルの鑑定をもっているのだね、兄よ。

 

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