第239話 浮世音楽堂(3)
ノリさんの行ってきてほしい、と言う国はシラタマの北方にあると言う。
また、認識阻害が起きていて、私とアオくん、そして兄はその国の国名を認識することができなかった。が、凍結魔法に直接関連していない天くんは普通に認識できていたようだった。
この認識阻害は厄介で、その「言葉」を発していたとしても私にはジャミングがかかり認識対象外となる。でもきっとそんな言葉を言ってるんだろうなっていうことだけはわかる。
「これから冬になっていくからね、雪と氷の国になっていくんだよ………は。まあ、行ってみたらわかるかな?あまり先入観を持たない方がいいし」
「私のレベル上げのフィールドは落ちたダンジョンを除けばアトルのダンジョンでランクアップをはかっていったのですが、突然いっても大丈夫なレベルなんですか?」
ノリさんはそれを聞いてニヤっとする。
「どの国でも産まれてすぐは誰でも弱い。そこで暮らしていける人がいるということは、対抗する手立てがあるってことだと思わないかい?君たちの故郷の周りに出ていたモンスターは強かったかい?」
「確かに、普通に村の外、歩けましたね。位置的には強いモンスターの出る場所ですが、村に結界がはってあって村から2キロの範囲内であれば強いモンスターは出なかったですね」
「そうそう!そこなんだよ!私、いい仕事してるでしょう!」
「は?!」
「私の趣味でね、国が大きな結界を作れるところ以外はそれこそ半径2キロくらいは強いモンスターを弾く結界を張っていたんだよ。その2キロ以内でも最弱・弱・中・ちょっと強い中みたいに段階的にレベルがあげれるように侵入できる区画を設定していたんだよ」
なんかこの人、すごいことを言ってる気がする。この世界丸ごとこの「救国の魔法使い」の庇護下か?
「多分ね、今から向かってもらう国、自分で結界が張れていたんだけど、どうも王が斃れたようでね。結界を補強しないとネルドと同じような状況になりそうなんだよ。今私はユウへの魔法の伝達ミッションを優先したいからね。きっとユウにこの魔法教えたら私のものより工夫されて良いものができるきがするんだよね」
「お前俺のこと買いかぶりすぎじゃ」
「そしてそれを見て私の魔法を補強する。アイディアをもらっちゃうわけだ」
口に出さなきゃいいのに、って思った瞬間魔法使いさんは兄さんにヘッドロックされていた。そして言葉苦しそうに続けてくる。
「そこでだ。アオくんも結界系呪文使えるだろう?」
「いえ!僕より弟のイオの方が巧緻魔法得意ですね」
「じゃあ、これからはアオくんも得意になってもらおう」
そう言うと、どうも魔法使いさんは魔法式をアオくんに送った、らしい。
「なんですかこの複雑な魔法!」
「アオくんはね、これを誰かに伝達できるところまで解析して覚えること。これが、アオくんの修業。特例として弟のイオくんだっけ」
「はい、弟はイオです」
「君たちは魔法とか全部、共有できるんだろう」
「できます」
ノリさんは自分用、としている青緑色のソファで寛ぎながら顎に手を当てる。
「共有はして、そして解明も2人がかりでいいよ。でもこれはあーちゃんに言ってはいけないよ。怒っちゃうから隠密ミッションということで。あくまでも君たちの師匠は、あーちゃんだからね。ただ、いくらなんでも悟られる可能性も高い。その時ははぐらかすなよ。私のせいにしていいから、正しくしっかり説明するように」
「わかりました!」
「よし、いい返事だ。頑張れ。そしてチーズさん?」
「はい!」
突然話しかけられると思わずびっくりしたし身構えた。
「アオくんについていって、一緒に世界を見つつ修業してくるといい。あともう1人、よかったら天もつれて言ってくれると嬉しいがどうだろうか?」
突然話をふられた天くんが期待のまなざしの顔をこっちに向けてくる。
「あおあおと冒険いけるの?!ユウ兄ちゃん!!いいの?!」
「聞いて見てあげいよう。チーズはどうだい?」
否定できるわけはない。天くんはまだ子供といっていいのか幼児といっていいのかわからないけど、強さだけはめっちゃくちゃ強い。正直どんどん危険地帯に突っ込んでいっている、または突っ込んでいく予定の私の生存率があがる。
「むしろ歓迎」
「よしよし、許可は得たな。なにかがあればいつものホットラインで、いいかなアオくん」
「了解です!」
「ういのレベル上げもしっかりしてくるといい。行ってみたらわかると思うけど、今の君たちにものすごく適した国だから」
「えーそんなもったいぶるような北の国、俺も行きたい」
「魔法式編み上げたらいきましょう?」
「えー…別にいいけどさ…」
「まあ、魔法式を編んだところでもその先アップデートをしてちゃんと『失敗しない』魔法式まで育てあげないといけないですけどね。魔法の素体があるのとないのは仕上がりが大分違うと思うんですよ。頑張りましょう」
「りょ~かい!しゃあない!チーズ頑張っていってこいよ!」
「ありがとう、兄さん!……ってちょっと思い出したんだけど、私、兄さんのこと『ほっちゃん』って呼んでなかったかな。私兄さんに『ベティ』って呼ばれていたきもしている…いや、気のせいなのかな……」
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