第1話 好きな色



 青とピンクが好き。深く、華やかな色。

 夜明けの空を連想させる、清廉で神々しい色。

 十代の頃は黒やグレーが好きだった。

 若かったから。若さにまさる輝きはないから、他に頼る必要がなかった。



 オレンジやイエローも好き。明るく、瑞々しい色。まぶしい光の色。

 歳を経るごとに、鮮やかな色彩が日々の生活へ染み込んでくる。

 一秒一秒と進む衰えを隠すのではなく、いつも明るい気持ちでいて、と誘ってくる。

 目を閉じても、鮮やかな色彩はまぶたの裏に沈まない。



 派手と思われてもいい。自分で選んだ色。かたち。ファッション。

 あえていうなら、心の健全のための身繕い。


 明るい服を着て、外へ出よう。


 春が、爛漫にあふれている。

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