第225話 すきやきが好き(鍋とは言っていない)




 突然だが、すきやきについて語ろうと思う。

 すきやきといっても鍋の方ではない。

 鍋の方も好きだが、今ここで語りたいのは丸美屋のすきやき(ふりかけ)である。

 どうして語る気になったかというと、今目の前にすきやきがあるからである。

 なぜパソコンデスクの上にふりかけの袋があるのだろう……と自分でも思うのだが、あるものは仕方ない。


 ふりかけも美味しい物が沢山あるが、私は子供の頃から丸美屋のすきやきが一番好きだった。

 時にはかつおや鮭やのりたまご味に心を移した時期もあったが、最後は必ずすきやきに戻ってきた。すきやきはソウルフードならぬソウルふりかけなのである。

 すきやきは、まず色がいい。赤い色がほかほかご飯に映えて食欲をそそる。

 次にとても美味しい。肉とたまごと海苔……カリカリと歯ごたえがよく、噛みしめるとギュウッと牛の旨味が口いっぱいに広がる。

 モ~ご飯が止まらない。次から次へとごはんが進むテロふりかけ。

 いや、すごいよね。鍋の味を再現してしまうなんて。発想の勝利としか。


 丸美屋のふりかけの王者はダントツで「のりたま」であり、これが不動らしい。

 世の中はのりたま派が主流であり、私もこれまでの人生においてすきやきが好きと言っても誰も同意してくれなかった。「なんかのギャグ?」と言われたこともある。

 でも、私は決してのりたまには屈しない。孤高であっても、すきやき愛を貫いていたい。

 もし万が一、すきやきが廃盤にでもなろうものなら、丸美屋に100通くらい自作自演で、死んだじいさんの名前も勝手に使って猛抗議してしまうかもしれない。

 それくらいすきやきが好き。


 ……と思ってるんだけど、まず日常でふりかけ談義になることはまずない。

 そして、この熱い想いは空回りしたまま、今夜は浅草へ行ってすきやきを食べる。(ふりかけとは言っていない)

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