第252話 月を摘まむ




 寒波のせいか、それとも冬の乾燥した空気のせいか、空にのぼった満月が異様に明るくてドキリとする。

 星は全く見えなくて、闇の中にぽつりと浮かんだ孤高の月。

 ほのかに黄味を帯びて、まるでまんまるのパンケーキ、もしくはでこぼこのざらついたチーズのような……。


 なんとなく左手の親指人差し指を添えて、月を摘まんでみた。

 手の中にすっぽり入った月。今だけは私のもの……。

 このまま摘まんで、口に入れてみたいなーんて。

 摘まんだ写真も撮ってみる。

 思えば、子供の頃からそんなことばかり考えて一人で遊んでいた。

 今だってそうやって遊んでいる。

 こんなんだから、いつまでたっても大人になれない。

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