第132話 鯛焼きを頭から食べるか、尻尾から食べるか




 鯛焼きが好きである。

 元々餡が入った菓子が好きだというのもあるし、安いし、街を歩きながら手軽に買えるのが良い。

 昨今はカスタードクリームだの、さつまいもだの、抹茶だのとバリエーションも豊かで私もついつい新作を見かけると買ってしまう。当たりの味もあれば、失敗することもある。


 ところで、鯛焼きを食べる際に、頭と尻尾、それとも腹、どこから食べ始めるかでその人の性格が出るような気がする。

 私はというと、尻尾からである。何故かというと、頭の方が餡が沢山かつ均等に詰まっていて美味しく感じるから。尻尾は皮の部分が厚くて、あまり味がしない。もったりしている。

 好きなものは最後まで残して食べる主義なので、尻尾から食べ始めて最後に頭(餡たっぷり)へ到達する。

 子供の頃から、私は「尻尾からガブリ派」で、長年染みついた習慣を変えるのは難しい。


 しかし、そのように食べていると大抵物言いが入る。

 友人Aいわく、尻尾から食べるなんて見苦しい。頭から食べた方が綺麗だという。

 また友人Bいわく、鯛焼きは鯛で魚なのだから、丸焼きの魚と同じく両手で持って腹から食べるべきだという。

「それも一理ある」と同意しながら、私は気にせず二個目も尻尾から食べる。


 鯛焼きを、誰かと半分こすることもある。別に半分にするのは嫌ではない。

 こちらに鯛焼きを割る権利がある場合は、相手に頭の方をあげることにしている。

 私の中の、厳然たる鯛焼き部分ヒエラルキーからすると、頭は尻尾よりも格上である。

 その格上の部分をあげるということは、相手を尊重し、礼を尽くし、余分に餡をあげることで待しているのである。

 いわば小さな接待。あなたが喜んでくれるなら、私はもったりした尻尾でいい。

 そんないじらしい気持ちが潜んでいる。


 しかし、今までそのことに気づいてくれた人は一人もいなかった。

 なので、今回一念発起して書いてみた。

 誰に何をアピールしたいのかよくわからないけれど、これだけは胸を張って言いたい。


 鯛焼きは、頭が一番美味しい。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る