第124話 紙上の煙草は好きだけど
私は煙草を吸わないし、吸いたいと思ったこともない。
まず気管支が弱いので副流煙を吸うだけでも喉が痛くなる。
匂いも苦手で、服や髪につくとがっかりする。
唯一吸ったのは、トルコに行ったときに勧められた水煙草くらいだ。
けれど、創作における煙草の描写や喫煙するキャラは好きである。
彼らは自分がしない(できない)ことをしている。
それが新鮮にも、格好よくも映るのだろう。
以前、飲み屋に行った時、JTのキャンペーンガールたちが席を回ってきて、試供品の煙草を客に配っていた。何故か私も貰ってしまい、メビウスを一箱持て余している。
何度か人にあげようとしたが、全て「吸わないから」と断られてしまった。困った。捨てるのもなんだか勿体ない。箱のデザインは好きなので、机の上に飾っている。
時々、煙草の描写にリアリティを出すため、このメビウスを一本くらい吸ってみようかと思うことがある。ライターはないけど、マッチやチャッカマンはある。
それらを持って来て、箱を開封しかけたところでいつも断念する。
私は臆病である。
法律上は何の問題もなく、誰に迷惑をかけるわけでもないのに、煙草の一本も吸えない。
健康を損なうのが怖いのではない。一本くらい吸ったところでどうってことはない。
ただただ、未知なる嗜好に足を踏み出すのが怖いのである。
自分が築き上げた煙草への勝手な憧れとイメージを、現実に壊されたくないのである。
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