第29話 肉友の輪




 4年ほど前から急に肉が大好きになってしまった。

 鳥も豚も牛も獣肉もなんでも食べるが、一番好きなのは馬である。

 何故、好きになったのかはよくわからない。きっかけも特にない。

 肉食に理由など必要ない。身体が欲するから肉を食べる。欲望のままに食べる。

 そこに肉があるから食べる。肉たらしいほどに肉が好き。拝みたくなるほど肉は美味い。肉、ありがたし。南無。



 それまでも肉は普通に食べていたが、肉の名店へ連れていってもらってもその場限りに「あ~美味しかった」と思うだけで、自ら開拓したり店に通ったりすることはなかった。食べ放題の焼肉などはどちらかというと敬遠していた。

 それが謎の肉覚醒を経てからは、肉イベントに誘われればホイホイと釣られ、行きたいと思った肉の店には自ら予約を入れ、国内の和牛の名産地へ行き、時間があればデパートの催事の肉フェアなるものへも出かけるようになってしまった。

 お付き合いではなく、自ら肉を欲し、行動に移すようになった。肉が私の行動範囲を広げたのである。

 冬場は自宅に友人を呼んですきやき会も始めた。

 みんなで肉を食べると楽しいから……というのもあるがこれは建前で、一番の動機は「私が肉を食べたいから」である。


 肉イベントでは、新たな出会いが待っていた。肉友である。

 年代、性別を問わず肉会には肉を愛する肉食獣たちが涎をたらして集い、美味なる肉情報が矢のように飛び交い、争って肉を食らい、知り合いになると各人が主催する肉イベントに誘われ、それに行くと更なる出会いがあり……と芋づる式に肉の輪は広がって行った。

 おかげで毎月29日はSNSに肉の写真があふれ、毎回とんだ肉テロをくらっている。


 肉友は自営業の人が多く、飲食店経営者や肉の卸し業者もいて、仲良くなると格安で美味い肉を味わうことができた。A5ランク和牛をほぼ原価で提供など、採算度外視のとんでもイベントもあり、このお得感を味わってしまうともう肉食の沼からは抜けだせない。

 肉を愛するあまり器具を揃えて自宅で本格的なBBQを開催する人も現れ(私のすきやき会と動機は同じだと思う)、ホームパーティなどにも呼ばれるようになった。


 クリエイターも肉好きが非常に多い。

 特に多いと感じるのは漫画家さん。漫画家さんの知己は、殆どが肉イベントで知り合った。どうも肉を食べると作画がはかどるらしい。売れっ子作家さんほど重度の肉依存症である。物書きだと、放送作家さんが多い印象。やはりテレビ業界は焼肉文化なのか。

 普通に暮らしていたら絶対に知りあわなかっただろう人ばかりで、肉も美味しく、話も面白く、食べながら笑い、笑いながら食べる時間は幸せそのもの。

 まさしく肉の神のお引き合わせと感謝している。個性的な肉友の話も、これから書ける範囲で紹介していきたい。


 肉友の共通点は、とにかくみんな元気なこと。

 そういえば長生きの人は普段の食生活で必ず肉を食べているし、酒を飲みすぎて身体を壊す人はあまたいれど、純粋に肉を食べすぎて死んだ人の話は聞いたことがない。やはり肉食は健康に良いのだろう。

 かくいう私も肉を食べると、翌日とても身体の調子がいい。肉さまさまである。







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