第5話 小説は文頭を一字下げして書いた方が良い




またもや細かい話であるが、小説においては、改行した文頭は一字下げした方が良いと思う。

理由は単純で、その方が読みやすいからである。

縦書きの本のみならず、横書きのWEB小説であってもそれは同じだ。

1000字以内の短編ならともかく、長文になればなるほど字下げは生きてくる。

文章の切れ目がわかって非常にありがたいのだ。

字下げをしていないからといってブラウザバックはしないが、下げてある方が安心する。


ただ、作家の中には、あえて字下げをしない人もいる。

有名どころでは、文豪・谷崎潤一郎。

彼の本を読んだことがある人はわかるだろうが、改行のあと一切字下げをしていない。

谷崎本人の希望でそうなっているらしい。


私は十代の頃に、全てではないが、「痴人の愛」「春琴抄」「細雪」等、谷崎文学の有名どころはひととおり読んだ。

読めば読むほどに、耽美な世界観と宗教かと思うほどの女性崇拝、行間から滲み出る色香に酔いしれた。

直接の性描写はないのに、台詞やヒロインの仕草だけで匂い立つような官能の気配があり、興奮した覚えがある。


しかし、正直に言うと、短編も長編も字下げしていないので非常に読みにくかった。

谷崎潤一郎という、誰もが納得する筆力を持ち、作品を評価され、安心して読める作家でなければ読まなかっただろうとも思う。

本人も書いていて不便はなかったのだろうか……? と思っていたが、最近知ったことでは、谷崎の直筆原稿は一字下げで書かれていて、活字にする際に字下げしないよう(字上げとでもいうのだろうか)指示していたようである。

それを知って、なーんだと思ってしまった。

文豪も、一字下げしたほうが書きやすかったのだ。


なので、文体に余程のこだわりがないのであれば、文頭は一マス字下げして書いた方が良い。

どんな文章であれ、外部に公開するからには、人に読んでもらうために書くのだ。

読者にとって、読みやすいに越したことはない。



※ちなみにこのエッセイも、地の文は字下げ設定されている。

カクヨムにコピペした際に、書式が解除される。



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