第190話 夢遊のまぼろし




 とろとろと眠っていたら、吐いた息は白く、あっという間に天井に昇って消えていくのが見えた。

 おかしい、寝ているはずなのに……と思っていたら、見えるはずもない外は雪混じりの冷たい雨が降っている。

 もう雪が降ったのか、あまりにも早すぎないかとぼんやりしていると、カンカンカンと何かを打つような音がして目が覚めた。


 起き上がったら、それを狙ったかのようにしーんとしている。

 確かにここ一ケ月ほど隣家は工事をしていて、工事業者から騒音を詫びる手紙がポストに入っていた。平日は朝からドリル音や壁を叩く音がしていた。

 しかし、手紙によれば、工事は11月10日までとなっていた。

 もう工事は終わっているはずである。人の気配もない。

 工事の音が聞こえてくるはずはなかった。


 外を見やれば、雪も雨も降っていない。

 ああ、どこまでが夢だったのか……と思ったところで、息だけが白いのに気づいて、思わず笑ってしまった。



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