第74話 歴史好き=戦国、幕末ではない②




 元々、マニアとかオタクというのはジャンルを問わず専門職であって、同じ趣味ではあっても得意分野は人によって違ってくる。

 歴史ファンと呼ばれる人たちも、戦国・幕末好きが圧倒的に多いが、他の時代にもちゃんとファンはいる。

 


 とりあえず世界史は横に置いておいて、私が日本史で一番好きな時代は平安時代である。

 その次が奈良・飛鳥時代、それから古代(神話~卑弥呼の頃から7世紀くらいまで。殆どよくわかっていないのでミステリー)、あとは鎌倉・室町の中世、近代史(明治~昭和)、戦国、幕末くらいの順位である。


 平安時代が好きなのは幾つか理由があって、まず一つは9歳くらいの頃に紫式部の伝記漫画を買ってもらい、その流れで源氏物語や古典にどっぷりハマってしまったこと。

 実は私が初めて物語らしきものを書いたのは9歳の時で、それも平安時代のお話だった。

 その話はなんと原稿用紙どころか画用紙(!)に鉛筆で書いていた。ご丁寧に挿絵までつけた記憶がある。

 話は、貴族の美しいお姫様が出て来て恋愛ごととか権力闘争とか色々あった挙句、車が盗賊に襲われて入水して死ぬというとても暗い話で、今思い出してもなんでこんな話を書いたのか不思議でならない。当時はそれが面白いと思っていたのだろうが……。

 とにかくその平安時代を舞台にした入水話が初めての創作である。


 さらにその後、出版界で平安ブームが起き、平安時代を舞台にした小説や漫画がヒットした。それらを読んで尚の事平安時代が好きになってしまった。

 具体名をあげると、氷室冴子さんの「ざ・ちぇんじ」「なんて素敵にジャパネスク」。

「ざ・ちぇんじ」は今でも単行本を持っているが、何度読み返しても面白い。

「とりかへばや物語」自体が千年前の元祖ラブコメみたいなお話だけど、それを現代風にわかりやすくアレンジし、どのキャラクターも生き生きとして本当に面白い。

「なんて素敵にジャパネスク」は友人が貸してくれた漫画から入ったのだが、原作も全巻読んだ。古代日本を舞台にした「銀の海 金の大地」シリーズも大好きで続巻を楽しみにしていたけど、残念ながら作者が鬼籍に入ってしまい未完となってしまった。

 集英社コバルト文庫は10代前半まで随分沢山の本を読んだが、私の中でコバルト文庫の名作と言えば、まず第一に氷室さんの平安ものである。


 それから、夢枕獏さんの「陰陽師」。安倍清明を知ったのはここから。

 田辺聖子さんの源氏物語や落窪物語。落窪物語は最近出た文春文庫で再度読んだが、「2016年発刊のラノベです」と言われても信じてしまうくらい文章が若々しくてびっくりした。

 どれもあまりに面白く、ページを繰るのももどかしく、私は寝る間を惜しんで読んだ。

 古典に対して抵抗がないのは、これらの作品のおかげである。



 なので、歴史ファンとはいっても創作の影響を多大に受けているので、フィクションを読んでから「あれ? 史実はどうなんだろう?」と思い、調べてハマるということを繰り返してきた。

 そのせいか、創作物に対して「史実に忠実であること」は一切求めない。

 時代的に明らかにありえないぶっとんだ設定でも、大胆な改変があっても、夢とロマンがあって面白ければそれでいい。

 逆に同じ歴史ファンであっても、「史実と違う」「○○はこういう性格ではない」とねちねちクレームを言う人は苦手である。

 いや、あなたが正しいと信じている歴史人物像だって、全部あなたの妄想か、他の作家の影響だから……。



 話がそれたが、やはり子供の頃に読んだものというのは影響甚大である。

 元々好みだったのに降って涌いた平安ブームにどっぷりつかって、日本史の中では一番好きになってしまった。

 需要があるのかどうかはわからないけど、いつかは平安ものを書いてみたい。

 できればお姫さんが盗賊に襲われて入水する展開ではない方向で……。


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