第315話 女性の一人称




 世代を問わず、一人称が「私」「僕」の男性が好きだ。品がある。

 普段は「俺」でも、公の場だと「私」になるのもいい。


 ところが、男性として生きているわけではないのに、一人称が「俺」「僕」な女性はどちらかというと苦手である。

 文章なら気にしないし、創作で登場人物がしゃべっているのならいいけど。

 テレビでも舞台でも、そういうキャラだとわかったうえで観ているのは面白いけど。

 でも、何げない日常で、割といい年した女性が「僕」「俺」で話しているのを聞くとぎょっとしてしまう。

 ちょっと乱暴な気がする。何か痛々しい気分になる。

「なんで僕っていうの? 何かこだわりがあるの?」と尋ねたくなる。(尋ねないけど)


 よくよく考えれば、一人称でその人の人格の何がわかるわけでもない。

 英語に訳せば、全部「I」でしかない。個性といえば個性。印象を変えるこちらも身勝手とは思う。

 けれど、一般的に「私」という一人称は丁寧な表現なのだ。

 丁寧なことばに接すると、こちらも丁寧に扱われている気がして嬉しくなる。

 常識、女性らしさがどうこうというより、雑な扱いをされているようで残念な気分になるのだ。


 何にしても「わたし」「わたくし」が無難だし、最強だね。私はそう思う。


 ……なんだけど、不思議なことに「あたし」「名前呼び(〇〇は~)」「姫は~」「うちは~」と自称する女性は結構好きだったりする。

 痛いとかおバカというより、わざとこういうキャラで売ってるんだろうなあ……と思うから。

 一種の営業だよ営業。芸だよ芸。芸なら面白ければいいよ。

 もし皇帝であったら、余は許す。朕を興じさせよ。



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