第122話 幸せの梨
台風の影響なのか、最近やたらと野菜や果物が安い。
先日などは、八百屋で結構大きな幸水が一玉78円とヤケクソのような価格で売られていたので、ここぞとばかりに沢山買いこんできた。
果物はなんでも好きだけど、秋は特に梨がいい。
一時期、洋梨を含め色々な品種を食べ比べてみたが、やはり幸水が一番美味しいと思った。
甘くて瑞々しくて、何よりシャリシャリとした食感が最高。叶うなら箱買いしたいくらいである。
実際、子どもの頃は、親が毎年段ボール一箱分も幸水を買っていて、毎食のように食べていた。
勝手に玄関に置いてある段ボールから梨を取ってきて冷蔵庫に補充し、食後にまな板と包丁を持ち出して自分で剥いて食べていた。
梨食(というのか?)は、もはや自分の中では習慣と化していて、気づいた家族が欲しいといえばあげたし、何も言われなければ一人で一玉全部食べた。
「剥いて~」と人を頼らないだけマシだが、随分と食い意地が張っていたと思う。
甘い物は別腹というけれど、その頃から私の中では果物は別腹だったようである。
現在も、食後に梨を剥いてシャリシャリと食べる。
無意識のうちに剥いて、食べている。本当に勝手に手が動いている。
気がついたら食べている。
何度食べても幾つ食べても美味しい。こんな美味しいものはない。
幸水は、その名の通りに幸せの味がする。
こんなに絶賛しているが、別に梨農家の回し者ではない。
この文章を読んだからといって、梨が食べたくなってウッカリ幸水を箱買いしてしまっても責任は取れない。
だけど、いらないなら全部私に送って欲しい。それはもう粛々と食べるので。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。