第121話 気に入った舞台は最低3回観たい




 舞台(ストレートやミュージカル)を見に行って、脚本なり役者さんなりの演技がとても良いと、時間が許す限り何回でも通いたくなる。予想以上に素晴らしい出来だと、掘り出し物を見つけたような気分になり、映像と違って一時停止できない生の瞬間を何度でも目撃したくなる。

 空席があって時間貴族ならば全通したいくらいだが、さすがにそうもいかないので3回観れたらいいなと思っている。(実際は「一回観ればいいや……」になる演目が殆どなので、そうあることではない)


 人によって違うだろうが、私が観たいのは以下の3公演。


 ①初日(初演)

 お勉強回。ざっくりとストーリーや配役を覚え、全体の流れを掴む。

 色んなことが一気に流れ込んできて情報過多のため、演技の細かい部分までは追えないことが多い。自分が理解するのにせいいっぱい。よくわからなかった部分は、帰ってからネットでネタバレ考察などを読んだりする。或いは原作も読む。


 ②中日なかび

 公演の大体折り返し地点がベスト。良席だと嬉しいが、できれば最後列のそのまた後ろのセンターで立ち見をして全景が観たい。まあ、無理だけど……。

 舞台上の演者たちがそれぞれどういう動きをしているのか、表情なども注視したい。ストーリーを追うことはない。


 ③千秋楽

 初日に比べて、どこまで変わったかが観たい。

 当然のことながら公演を重ねるにつれて演者も慣れてくるし、演技に余裕も出てくるし、上手くなっているのが常なので、公演の集大成を存分に楽しみたい。

 ただアクシデントで役者が降板・交代してしまっていたり、喉をやられて声が枯れていたりもする。声が出ないのに、歌ったり必死に声を張りあげる様は観ていて痛ましい。内心で「早く、早く終わらせてあげて……」と思う。

 終演後には挨拶もあって、無事終わったことに安堵しつつ、同時にもうけして彼らに会えないことを寂しく思う。



 1日2公演の場合は、マチネの方がいい。役者さんが疲れていないので。

 無論、疲れなど微塵も見せないのがプロであるが、新人さんや初舞台の人あたりはやはりソワレで疲労が滲んでみえる。

 一番いいのはマチネを観て、その後ゆっくりと食事をし、ソワレを観て、その後も友人たちと夕食がてら熱く公演内容を語りあい……という観劇漬け。まさに至福のひと時である。

 舞台は生もの。一期一会。キャストやスタッフが同じであっても、その日、その時、その瞬間、その演技には二度と巡り合えない。だからこそ、愛すればこそ、何度でも観て同じ空間の同じ瞬間を共有したい。



 ……と希望だけいえばこんなかんじだが、自分と同じことを考える人は多勢いるもので、実際は観る以前にチケットが確保できず断念することの方が多い。

 元から人気の公演なら3回どころか、チケットが1枚も取れないこともあるし、始まってから人気が出てあっという間に完売したりもする。取れなかった場合は、残念だが諦めるしかない。

 なので、行きたい舞台ほど半ば夢と化していることもあり、自分でも舞台を観たいのか、自分が勝手に作り上げた夢想(理想)を観たいのかよくわからないこともある。




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